研究課題/領域番号 |
21K00679
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研究機関 | 奈良教育大学 |
研究代表者 |
吉村 雅仁 奈良教育大学, 教育連携講座, 教授 (20201064)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 複言語教育 / 高等学校 / 言語意識 / 能力としての複言語主義 / 価値としての複言語主義 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、英語を含め6言語の外国語を必修とする高等学校に焦点をあて、複言語教育が学習者の言語意識、社会言語能力および各言語の運用能力にどのような影響を与えるかを明らかにすることである。初年度である2021年度は、当該高等学校第1学年において前年度から運用している英語以外の5言語教育に言語意識活動を加えたカリキュラムの実践を継続し、1年間学んだ生徒に対していくつかの観点から評価を実施した。具体的には、(1)自分自身の複言語能力に関する意識調査、(2)日本語、英語を含む7言語それぞれの4技能の能力に関する自己評価、(3)言語間の関係および言語使用に関する意識調査である。 (1)については、1年間学習した2年次生と、カリキュラムを受け始めた1年次生との比較を行い、自分自身の複言語能力を示すポートレートが、1年次生より2年次生の方が複雑化する傾向にあることがわかった。つまり、日本語、英語に加え、5言語の基礎的な学習だけでも、自分の言語能力の一部としてそれらを意識できるようになるということである。 (2)については、CEFRに基づく単一の言語能力基準での7言語の4技能の自己評価であるが、コロナの関係で前年度初にこの調査を実施できなかったため、年度末の1回のみの調査となった。言語によって達成度はかなり異なるが、全体的に見ていずれの言語もそれほど達成度が高いとはいえないことがわかった。 (3)については、言語の関係性への気づきや自分自身の言語使用に関する意識調査を自由記述で実施した。計量テキスト分析を行った結果、英語を含む多様な言語を生活の中で位置づけたり、言語学習に対する興味、関心、意識が変容した例が多く見られた。 以上の結果は、オンラインで行われたEDiLiC第9回大会で発表し、JACTFLの『複言語・多言語教育研究』に投稿し、掲載されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究を開始する2年前からほぼ同様のカリキュラムを実践してきており、初年度から生徒の評価を実施することができた。そのため、国際学会での発表や学会誌への投稿も可能となったため、概ね順調に研究が進んでいると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
対象の高等学校では今後も同様のカリキュラムが継続的に運用されるので、複言語教育を受けた学年が年度ごとに進行する。従って、2年目、3年目の変化を追うことが可能となる。また最終年度は卒業生対象の調査を加え、高等学校3年間の総合的な評価を行う予定である。 配慮すべき点としては、一部担当教員の異動があるため、その都度本研究の趣旨や基本方針を全教員に共有する必要があること、可能性としては低いが、コロナ禍による授業短縮、授業形態の変更なども予想し、その代替措置も準備しておくことなどが挙げられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響で国際学会における発表がオンラインとなり、旅費、宿泊費等が不要だったため。 次年度の国際学会が現地開催であれば、実践担当者(研究協力者)とともに発表予定である。その場合は複数名の出張旅費等が必要となる。
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