研究課題/領域番号 |
21K00680
|
研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
長井 克己 香川大学, 大学教育基盤センター, 教授 (20332059)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 音声学習 / 英語音素 |
研究実績の概要 |
研究初年度として,先行研究の調査と予備実験を行った。文献調査は所属機関(香川大学)で利用可能な論文データベースと,他大学の利用を併用した。 本研究は,英単語の認識はその単純な構成音素の知覚だけで行われるのではなく,音韻的長さ(音節数)や音響的長さ(時間長)等の副次的情報も重畳的に影響を与えていると仮定して進められる。実験統制上,日英語両言語に存在しない音素を対象とした実験が望ましいことは明らかであるが,初年度は予備実験として英語音素を用いた。実験では日本語を母語とする学習者が英語の/l/と/r/の聞き取りと発音を集中的に練習した場合,音韻知覚成績と発話の音響的特徴(子音の第2及び第3共振周波数,いわゆるフォルマント)がどのように変化するかを,日本語のラ行子音との比較を行いながら調査した。練習期間も実験参加者も小規模であったため,音響的特徴の大きな変化は見られなかったが,/l/と/r/の聞き取り成績は,向上する傾向が見られた。研究結果は本年度末に学会で口頭発表を行った。 次年度は本実験の1つ目として,未知の語彙の学習を,対象言語の音素・その音素を含む音節・その音節を含む語全体の3種類の操作とともに行い,どの単位で練習する際に最も学習が促進されるかを調べたい。試験語は日英両言語で無意味語となるように組み合わせ,合成音声による人工言語として提示した後,その記憶再生成績を比較する計画である。 本実験の2つ目として,学習対象言語の文字と音声の関係を学ぶことが,その言語の習得に必須であるか否かも調べたい。英語の音素認識は母語話者のリーディング力と強い相関を持つことが知られているが,日本語を母語とする英語学習者でもリーディングとの関係が強いのだろうか。実験1の試験語を文字提示して記憶再生実験を行い比較してみたいと考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
英語の文字と発音との関係は複雑(deep orthography)で,体系的な指導は簡単ではない。その困難さの原因は,音素・音節・単語の,どの単位で行う活動が最も効率的なのかが不明なことにある。それを明らかにするためには,日本語にも英語にも存在しない音を用いた学習実験を行うことが望ましい。しかし本年度は被験者の確保と日程上の制約から,英語の音素を用いた小規模な予備実験にとどまった。
|
今後の研究の推進方策 |
本実験では既知の英単語と英文法の影響を避けるため,音素・音節・語単位のそれぞれで非語非文となる無意味語と人工言語文を合成音声で提示する予定である。これまでの音源-フィルタによる子音や母音の再合成では十分な品質が得られなかったが,近年は高品質の音声合成がソフトウェア上で可能になってきていることから,その応用も検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では3カ年の初年度に実験機材(物品費),学会出張費(旅費),被験者謝礼(人件費)を計上したが,初年度は小規模な予備実験しかできなかったので,次年度使用額への繰り越しをせざるを得なくなった。次年度は本実験を行うので,計画通りに予算執行ができる予定である。
|