研究課題/領域番号 |
21K00684
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
吉川 龍生 慶應義塾大学, 経済学部(日吉), 教授 (30613369)
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研究分担者 |
境 一三 慶應義塾大学, 経済学部(日吉), 教授 (80215582)
山下 一夫 慶應義塾大学, 理工学部(日吉), 教授 (20383383)
縣 由衣子 慶應義塾大学, 外国語教育研究センター(日吉), 助教 (30847869)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 外国語教育 / オンライン授業 / LMS / パフォーマンス評価 / CEFR |
研究実績の概要 |
早い段階からアウトプットのあり方について検討を進める過程で、新型コロナウイルスの感染拡大からの回復や、高等学校の新指導要領の下で学んできた生徒が大学に進学してくるタイミングなどを考慮し、これまでの蓄積と令和3年度の実践・研究に基づき、まず成果を書籍化すべきとの判断に至った。そのため、インターネット上での成果公開や発表会といった部分を、書籍での公開・発表に振り向けた。また、執筆を計画的に進めるため、対面やオンラインでの研究会合やミーティングを頻繁に行った。 書籍は三修社から2022年10月頃までに刊行予定で、原稿はほぼ完成し作業日程も確定している。内容は、アフターコロナの大学における外国語授業を対象とし、高等学校の学習指導要領やCEFRの解説を中心とした理論的な裏付けを示した上で、パフォーマンス課題・パフォーマンス評価やICTを活用した実践例を示し、授業改善の具体的な方策を提示するものである。アフターコロナを見据えて情報が求められている分野であり、このタイミングで書籍化できる意義は非常に大きい。研究実施計画で設定した4点の活動項目とも密接に関連しており、インパクトの大きい中間報告となることは間違いない。 その他に、慶應義塾大学外国語教育研究センターの発行する学術誌『慶應義塾外国語教育研究』に投稿した(2022年3月18日締切/2022年9月末刊行予定)2篇の実践報告・論文がある。実践報告である荻野友範・吉川龍生「高等学校の中国語授業における辞書引き学習導入実践 ―紙の辞書とオンラインツール活用の試み―」は、ICTの活用や高大連携の形を示しているという意味で、意義が大きい。論文である山下一夫・吉川龍生「多様な“中国語”を受容可能にする授業へ――ドイツの大学における中国語教育の事例から」は、ドイツやイギリスの中国語教育研究者との意見交換を反映した内容となっていて重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
5月に行うとしていた当初の予定よりも早く4月から研究集会を行い、最終的な成果報告を見据えた研究活動をスタートさせた。その後の早い段階で、書籍の刊行を優先することになり、研究実施計画に示したオンライン上での成果アップロードや発表会を書籍刊行後に回す方針となった。アウトプットの仕方が当初計画からずれてしまった部分はあるが、書籍の刊行に向けて着実な授業実践やそれをもとにした原稿執筆ができており、全体的な進捗状況としては、「おおむね順調」と言える。 研究実施計画に示した境を中心とした理論研究と山下を中心としたLMS分析は、吉川のICTを活用した授業実践や、縣のパフォーマンス課題とその評価についての実践と併せて順調に進展した。国外協力者との研究集会は、個別にインタビューする形式で、当初の6月ではなく12月に行ったが、時期をずらしたことで、アフターコロナを見据えたイギリスやドイツの状況をより詳しく把握することができた。オンラインで計画していた授業見学は、2021年10月頃から2022年1月頃にかけて、オンラインに加えて、首都圏の高等学校や各地の中学校において教室での授業見学も数多く行うことができた。また、メンバー自身による授業実践もそれぞれ行うことができた。したがって、研究実施計画に照らしてみても、進捗状況としては順調であったと言って良い。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究については、書籍化によって見えてきた課題や実践可能性をメンバーそれぞれが自分の教育活動の中で実践しフィードバックを得ることで新たな知見を得る試みを継続していくことになるが、当初の境を中心とした理論研究と山下を中心としたLMS分析に加えて、縣を中心としたパフォーマンス課題・パフォーマンス評価の実践、吉川を中心としたICTと既存の教授法を組み合わせる授業実践を引き続き行っていく。 令和4年度は、5月には国内研究集会を開催して本年度の研究活動について再確認し、とりわけ授業実践について、より周到な準備の上で取り組めるようにする。また、令和4年10月頃には初年度に執筆した書籍や論文・実践報告が刊行されるため、令和4年度後半から、オンラインでの成果公開や国内・国外の学会での発表を行っていくことを目指した準備態勢を構築する。国外研究者との研究集会或いはインタビューも、書籍などが刊行された後の反応なども見つつ、令和4年度後半に行えるように準備を進める。 授業見学については、研究メンバー同士で実践の状況・成果を見学し合うのはもちろん、慶應義塾大学外国語教育研究センター関連事業での機会を活用して、令和4年秋に各地の中学校・高校・大学で、対面・オンライン両方の授業を積極的見学し、次の取り組みにつなげるようにする。 最終年度である令和5年度には、前年度の実践で得られた知見を反映した実践を継続し、国内外の学会での発表を行いつつ、最終的な成果報告とすべく活動をしていく。本年度(令和4年度)秋に刊行される書籍によって、研究成果の大枠は提示できるものと思われ、最終年度まで着実な実践を継続していくことで、研究成果の精緻化・パッケージ化をさらに進め、内容を深めた形での学会発表や成果報告会などの可能性を探っていくこととしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
まず、国際学会への参加費をオンライン参加の想定で計上していたが、令和3年度の成果の書籍化という方向に注力したことや、対面開催になった国際学会(HICE2022など)で発表がアクセプトされていたものの、帰国時の隔離期間が授業期間に重なってしまうなどの理由で取り下げざるを得なかったことがあり、その分は令和4年度以降に順次使用していくこととした。また、海外学会での発表がなかったことにより、原稿の英文校閲が発生しなかった分も、次年度以降の使用としたい。 次に、海外研究者も含めた講演者謝金も、海外研究者との研究集会もオンラインでの個別インタビュー形式となり謝金も発生せず、国内で講演会を行うこともなかったため、令和4年度以降に持ち越しとなった。 さらに、全面オンラインを前提に購入を検討していた機材やライセンスは、授業が教室に戻っていく流れの中で、購入することが適当なのか検討の余地があると判断され、令和4年度以降の購入か、対面授業の中でICTを活用していく方向性で有益な機材やライセンスの購入に振り替える方向で計画している。
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