研究課題/領域番号 |
21K00684
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
吉川 龍生 慶應義塾大学, 経済学部(日吉), 教授 (30613369)
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研究分担者 |
境 一三 獨協大学, 外国語学部, 教授 (80215582)
山下 一夫 慶應義塾大学, 理工学部(日吉), 教授 (20383383)
縣 由衣子 慶應義塾大学, 外国語教育研究センター(日吉), 講師 (30847869)
金 景彩 慶應義塾大学, 外国語教育研究センター(日吉), 助教 (50962437)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 外国語教育 / オンライン授業 / LMS / パフォーマンス評価 / CEFR / ICT |
研究実績の概要 |
新型コロナウイルスの感染拡大からの回復や、高等学校の新学習指導要領の下で学んできた生徒が大学に進学してくるタイミングなどを考慮し、2022年度中にこれまでの蓄積と令和3年度の実践・研究に基づき、まず成果を書籍化するという判断をしたが、2022年12月20日付けで『外国語教育を変えるために』(三修社)という書籍を刊行することができた。本書の配本(11月末)に合わせる形で12月4日に慶應義塾大学日吉キャンパス来往舎にて、「外国語教育を変えるために」と題した公開講演会を開催し、成果を広く発信することができた。書籍、公開講演会ともに、①新学習指導要領や資質・能力論、逆向き設計、②パフォーマンス課題・パフォーマンス評価、③CEFRの複言語主義とメタ言語能力、④アフターコロナにおけるLMSやICTの活用という構成で、研究実施計画で設定した4点の活動項目とも密接に関連しており、新型コロナウイルス感染症の感染拡大からの回復という時期にも合致したタイムリーな成果報告であり反響も大きく、その意義は非常に大きいと言える。 その他、学会や講演会などでの報告をそれぞれのメンバーが重ねてきた。とりわけ、吉川龍生「中国語辞書引き学習の導入実践報告」(2022年・第39回高等学校中国語教育全国大会、6月12日)や、縣由衣子・山田仁「フランス語授業における反転授業とパフォーマンス評価に関する実践報告」(5e Journee pedagogique de la langue francaise、日本フランス語教育学会主催、12月11日)などは、研究実施計画で設定した4点の活動項目に関連して、本研究課題で実践を重ねてきたものについての報告を行っており、そのフィードバックを踏まえた次の実践や理論化にもつながっていくものであり、重要な意味を持っていると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度秋までの刊行を目指すことになった書籍の原稿は4月中には初稿が出そろい、当初の予定通り5月に国内研究集会を開催し、書籍の内容の確認と同時に、令和4年度の研究活動全般について再確認した。それによって、令和4年度後半に予定されていた活動の準備態勢を整えることができた。研究集会以外にも短時間のオンライン・ミーティングを頻繁に行い、順調に原稿の修正・編集作業を進めることができた。そうした活動と並行して、学会発表や講演等も可能な限り行った。書籍は最終的にほぼ予定通り刊行することができ、刊行に合わせた講演会も成功裏に実施し、書籍刊行関連については極めて順調に活動を展開することができた。 境を中心とした理論研究や山下を中心としたLMS分析、縣を中心としたパフォーマンス課題・パフォーマンス評価の実践、吉川を中心としたICTと既存の教授法を組み合わせる授業実践、金を中心とした教材分析といったそれぞれの担当分野については、各人が自身の授業の中などで実践を重ねたほか、慶應義塾大学外国語教育研究センター関連事業での機会などを活用し、高校・大学を中心に研究授業や授業見学を行った。こうした活動によって、次の段階に向けた知見や情報をそれぞれのメンバーが蓄積することができ、おおむね順調に研究を進めることができた。 成果のオンライン上での公開については、令和4年度は書籍の刊行に注力するために、実現は令和5年度内を目指すことにしてあったが、やはりコンテンツはほぼ揃っているものの実際の公開までにはまだ準備が必要であり、この点は令和5年度の課題であると言える。ただ、オンライン公開に向けた進捗に関しても想定の範囲内であり、全体的に見ておおむね順調に活動を展開できている。
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今後の研究の推進方策 |
境を中心とした理論研究、山下を中心としたLMS分析、縣を中心としたパフォーマンス課題・パフォーマンス評価の実践、吉川を中心としたICTと既存の教授法を組み合わせる授業実践、金を中心とした教材分析という研究分担態勢を維持しつつ研究活動を推進していく。 当初の研究実施計画にあるように、まず5月に国内研究集会を開催する。6月にはオンラインでの国外研究者との意見交換の機会を設定する予定である。なお、6月に英国で開催される国際学会に代表者の吉川が応募中であり、採択されれば渡英時に現地での研究者との意見交換を行いたい。 本研究課題は、LMSの活用やパフォーマンス評価を中心としたオンラインによる外国語教育法についての提言を、ウェブサイトを構築して公開することを目的としているが、令和4年度に刊行した書籍で示した内容を踏まえてメンバー各自が高校や大学を中心に研究授業や授業実践を行い、実践結果を踏まえて公開するコンテンツの修正や改善を進めていく。令和4年度同様、慶應義塾大学外国語教育研究センター関連事業での機会なども活用して授業見学を積極的に行い、そこでの考察や反省も成果に反映するようにする。 成果のオンライン公開が残された課題と言えるが、令和5年度末までにPDFファイル形式での成果報告書を作成し、ウェブ上で公開することを目指す。書籍などの紙媒体の成果報告としない理由は、公開の直前まで授業実践とその分析を行い精緻化・パッケージ化をさらに進めるためである。 その他の成果の発表・公開方法としては、メンバーがそれぞれの関係学会で随時研究発表を行うのはもちろん、招待講演などの機会を捉えて積極的に本研究課題の成果を発信していくようにする。なお、すでに6月に神奈川県で開催される中国語教育学会での発表が採択されている。また、令和5年度は本研究課題の最終年であり、年度末に最終的な研究成果発表会を開催したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
まず、令和3年度から令和4年度に、海外関係の支出が少なかったことや、対面授業が復活していく中でICT関係のライセンス料支出を見直したことなどで、繰越金が発生した。令和4年度は、書籍を刊行して買い取りを行ったこともあり、単年度ベースで見るとほぼ当初の計画通りの支出であった。そのため、令和3年度から繰り越された金額程度の繰越金が生じてしまった。令和4年度に前年度からの繰越も含めて使い切らなかった理由は、最終年度の令和5年度に成果報告関連でまとまった支出が見込まれていたためである。 使用計画として、対面での開催が増えてきている国外の学会への参加費と、成果報告集の公開および研究成果発表会の開催にかかるコストに振りむけることを考えている。国外の学会に関しては、6月に英国で開催される学会での発表の可能性がある。さらに国際学会の開催形態がコロナ禍以前に戻りつつある状況を考えあわせると、他の国際学会への参加の可能性もある。また、成果報告集・成果発表会関連では、人件費やISBN取得などの経費の出費が見込まれている。
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