研究課題/領域番号 |
21K00687
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
上村 妙子 専修大学, 文学部, 教授 (30205926)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ライティング / ジャンル・アプローチ / 日本語の活用 / プロセス・アプローチ |
研究実績の概要 |
2023年度は、ジャンル・アプローチを2つの異なる指導方法と結びつけ、その指導効果を検証する研究を行った。1つ目の研究は、ジャンル・アプローチを日本で学ぶ多くの学生が母語とする日本語を活用した指導と結びつけたものである。この研究では、人物の描写文を目標ジャンルとして設定した。まず、日本語を活用して、このジャンルの特徴である構造的特徴を説明した。次に、構造上の構成要素を表現するための英語の語彙と構文(文法)を指導した。指導後の学生による作文は構造、表現のいずれにおいても、指導前の作文に比べ高い評価を得るものであることが判明した。この研究成果については、Senshu Journal of Foreign Language Education、No. 52(2024)に発表した。 2つ目の研究は、ジャンル・アプローチをプロセス・アプローチと結びつけたものである。従来のジャンル・アプローチではモデル文を指導の初期段階で学習者に示し、その特徴を教師が明示的に解説するものとされ、しばしばこのアプローチは「規範的」と批判されてきた。そこで、本研究では、従来のジャンル・アプローチの中に、アイデアの発見、アウトラインの作成と見直しといったプロセス・アプローチの要素を導入した指導法を考案し、その指導法を実践した。指導後の作文は、単なるモデル文の模倣ではなく、課題文に示された読者、目的、状況などコンテクストに配慮した内容となっていたことが分かった。この研究の成果は論文としてまとめ、Senshu Journal of Foreign Language Education、No. 53に投稿予定である。 これら2つの研究により、ジャンル・アプローチの指導効果は、他の指導方法を組み入れることにより一層高まることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、ジャンル・アプローチに日本語を導入した指導法の効果を研究論文としてまとめ、ジャーナル(Senshu Journal of Foreign Language Education, No. 52, 2024)に掲載することができた。また、ジャンル・アプローチとプロセス・アプローチを組み合わせた研究を行い、その成果を国際学会(The 32nd International Symposium on English Language Teaching and Learning and Book Fair, 2023年11月)で発表することができた。2023年度の目標は、ジャンル・アプローチを他の指導法と組み合わせ、新たな指導法を考案し、その指導効果を検証することであったので、おおむね順調に研究を進めることができたと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、2023年度に行ったジャンル・アプローチにプロセス・アプローチの要素を取り入れた研究の成果をまとめ、論文としてジャーナルに掲載する予定である。 さらに、課題文におけるコンテクストの明記が、学生の作文にどのような影響をもたらすのかを探っていく予定である。従来のライティングの試験や教科書に見られる課題文では、読者や状況などを含むコンテクストが明確には示されていないことが多い。しかし、「書く」という行為は、特定の状況及び読み手が設定され、ある目的を達成するために行われるものである。したがって、従来の課題文は極めて不自然であると言える。そこで、2024年度は、従来型のコンテクストを指定しない課題文と、特定の状況、読み手、目的を設定した課題文を用意し、これら2つの課題文のもとに書かれた作文がどのように異なるかを量的、質的に分析する調査を行っていきたい。その上で、ライティング指導におけるコンテクストを明記した課題文を設定することの教育的意義を示していきたいと考えている。 2021年度からジャンル・アプローチに関するいくつかの研究を行ってきたが、2024年度には、これらの研究を総括し、日本人英語学習者を対象としたライティング指導におけるジャンル・アプローチの有効性と今後の課題をまとめていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度は、研究成果を発表するための国際学会参加費を大学からの助成金で充当することができたため、次年度への繰越金が生じた。 2024年度には、従来型のコンテクストが不明確な課題文とコンテクストが明記された課題文という2つの異なる課題文のもとに作成された作文がどのように異なるのかを分析・調査する研究を行う予定である。その研究における分析に必要となるコピー代及び人件費、また研究成果を発表するための国際学会参加費用に充てる予定である。
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