研究課題/領域番号 |
21K00689
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
川嶋 正士 日本大学, 工学部, 教授 (50248720)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 5文型 / 統語分析 / Swinton文典 / Nesfield文典 / 神田乃武の動詞4分類 / 斎藤秀三郎の統語分析 |
研究実績の概要 |
本研究は5文型の史的研究の一環として日本での英語教育史的研究を行うことを目的とする。日本の英語教育で知らないものがいないほど普及した5文型であるが,これまで,どのように誕生し,日本に移入され,現在のように普及したかに関する研究はなされなかった。これらを明らかにする点で,国内外の英文法史における重要性は極めて高く,注目されている。研究は①5文型が日本に移入されるまでの統語分析の発達(1880~1917),②旧学制で現行型と異なる順序や編成による5文型の異種が現行型へ収束する過程(1917~1947),新学制で5文型が学習指導要領に記載されるまで(~1958)の3期に分かれた研究を行う計画である。 2021年度は①ついて研究した。その結果4本の日本学術会議協力研究団体の有審査論文を発表することができ,大きな成果をあげられた。具体的内容は,以下である。A)19世紀前半にドイツで統語分析が誕生し,英文法に摂取されていく過程を初めて明らかにした(川嶋 2022a)。 B)明治期の日本で輸入英文法書に見られた統語分析が国産英文法書に与えた影響と,20世紀に入ってからの国産英文法書に見られる統語分析と述部の一括形式化の発展について研究した。この過程では,まず Swinton文典に見られた統語分析を海外の19世紀英文法の発展と比較し,その特殊性を検証した。そして1880年代以降の国産英文法書に与えた影響を明らかにした(川嶋2022a)。 C)Nesfield文典に見られた統語分析の特徴を検証し,それが,神田乃武に始まる動詞の4分類に昇華した過程を初めて明らかにした(川嶋2021)。 D)明治期に「英学の巨人」と呼ばれた斎藤秀三郎の文法書をすべて調査し,斎藤の統語分析の推移と全体像を初めて明らかにした(川嶋2022b:4月末出版)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2021年度は,海外での国際会議の発表や大規模な図書館調査が困難であった。Covid-19の感染が抑制されている時期に国立国会図書館などで資料調査を行うしかなかったが,限られた状況の中で多くの成果が得られた。 特に,Swinton文典やNesfield文典をつぶさに調べることで日本の統語分析に与えた影響が明らかになった。 更には,神田乃武や斎藤秀三郎の英文法書をすべて調査し,国産英文法において統語分析が発展し,個々の統語的特徴が列記されたものが,次第に自・他動詞や完全・不完全動詞という基準により分類され,その分類に基づき,述部や文が一括形式化されていく過程を明らかにすることができた。 当初は2021年度に2~3本の論文を予定していたが,4月末出版(2021年12月末投稿)のものを含めると4本の論文を発表することができた。以上のことから順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は,予定通り1917年に『英文法汎論』が出版されたのち,旧制中学校制度(~1947)までの国産英文法書における述部や文の一括形式化について研究する。 Covid-19の感染防止に留意しながら,国会図書館などで可能な限り文献を調査する。 特に国産英文法書に見られる一括形式化の変容に注目し,それらが,どのような背景で生まれ,どのように継承され,最終的には現行型の5文型に収束する過程とその要因について解明することを目的とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍にあって,国内外の研究出張がほとんどできなかったため。今後,稀少図書の購入や資料を整理する際の人件費に充当する。
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