研究課題/領域番号 |
21K00702
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
萩原 章子 お茶の水女子大学, 国際教育センター, 講師 (00757487)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 漢語学習 / 形態素 / 非漢字圏学習者 / 文字表記 |
研究実績の概要 |
日本語を第二言語として学ぶ学習者にとって、漢語の語彙学習に困難を伴うことはよく知られている。本研究では効率的に複数の漢字熟語を学ぶ方策として、漢語を構成する形態素の漢字に着目させる効果を検証した。日本語語彙の多くは音読みの二字漢語であり、漢語の多くは長母音や促音、撥音を含む。よって漢字語彙を音読みの漢字の組み合わせとして意識させることは、音を手掛かりに漢語を覚えることに貢献すると仮定した。データ収集にあたっては、日本語が中級レベルの非漢字圏の学習者を被対象にコンピューターを用いた漢語学習を実施した。予備実験では漢語に多く含まれる特殊音を含む漢語群と特殊音を含まない漢語群の学習成果を比較した。その結果、特集音を含む漢語の優位性は確認されず、学習者は未習漢語を覚えようとするときは意味に集中しており、発音にまで意識を向けることは困難であると判明した。 本実験では、漢語を構成する形態素の単漢字に着目させる学習効果を検証した。英語学習者を対象とした複合語の先行研究では、学習者は複合語の表記(surface form)に着目しているため、restaurant-restのように複合語と形態素が意味上つながっていなくても、表記上の共通部分(rest)の認識が複合語処理を促進すると報告されている。一方二字漢語においては、漢語と形態素の表記の一致ではなく、意味上のつながりが処理を促進するという報告がある。本実験では「最高」のように熟語と形態素である単漢字に意味上の関連がある漢語群と「油断」のようにそれらが関連しない漢語群を学習目標語彙に定め、形態素の情報を提示する学習条件と提示しない学習条件での学習効果を比較した。結果、漢語と形態素の意味上のつながりの有無にかかわらず、形態素情報の提示による学習効果(実験による操作)は限定的で、形態素である漢字の既存知識が最も漢語学習に貢献することが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すべてのデータ分析は終了した。データ入力に複数人から協力が得られたこと、データ分析においても学内の専門家の支援を得ることができたため、遅れを取り戻すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究の成果をまとめた論文の出版に向けて準備中。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初データの分析を依頼する予定だった研究協力者が事情によりデータ分析を引き受けることが困難になり、別のデータ分析の専門家を探して分析を依頼することになった。よって論文作成が予定より遅れ、論文作成のために使用する予定だった予算を年度中に使いきれなかった。
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