研究課題/領域番号 |
21K00711
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
金 義鎭 東北学院大学, 工学部, 教授 (30364285)
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研究分担者 |
金 惠鎭 日本大学, 商学部, 教授 (40399176)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 韓国語教育 / 脳波 / Fmθ波 |
研究実績の概要 |
本研究では,韓国語の本質的な知識向上を狙うため,学習者の韓国語の習得過程が解明できるゲーミフィケーション・フレームワークの設計によるスマートフォン用教材の開発・活用を通して,外的学び中心の能動的学修に内的学びを加えた両学びの補完的融合モデルを構築することである。そのため,本研究では開発教材の評価は学習者の脳波に着目し,その分析による定量化・可視化の客観的なデータ検証で習得過程を解き明かすことを目的としている。 まず,1年目の2021年度では簡易脳波計を用いて,学習活動の定量化を試みた。脳波はヒトの頭皮上に現れる電気信号で,生理的・精神的状態を表す指標として様々な分野で活用されている。例えば,教育分野では多極脳波計による頭部全体の測定で得られる指標から定量的な学習評価が既に試みられている。一方,多極は高価で複数計測が難しく,手間取る装着のストレスから授業を阻害するなどの課題も残されて,実授業への導入までは至っていない。これらの課題に対して,廉価で装着性に優れる単極脳波計が活用できれば,実授業への導入がしやすく,複数人同時計測による学習時認知活動の評価も期待できる。しかし,単極は限られた少ない箇所の測定で,先行研究のように頭部全体の測定から導かれる認知活動の指標が活用できるとは必ずしも言えない。つまり,単極で表せる学習時認知活動の指標の有用性を検討せず,複数人同時計測による教育評価の実現は困難である。そこで本研究では,単極による学習時認知活動の指標を検討するため,Fmθ波に着目する。Fmθ波は計算や記憶などの認知活動で現れ,従来の指標に比べて学習時認知活動に適していることが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,簡易脳波計を用いて,学習活動の定量化を試みた。従来でよく用いたθ/αは眠気のθ波とリラックスのα波の比から精神的疲労を表し,学習能力を判断する。β/αは認知活動の活発化によって増減が相反するαとβを用いて集中度を表し,システム制御に活用されている。 一方,θ波とは別に,前頭部のθ波は認知活動の活性化と関わりが報告されている。この脳波は,前頭正中部を中心にθ波内の狭い周波数帯域(6~7 Hz)に現れるFmθ波で,計算や記憶などの認知活動で増加傾向がみられる。本研究ではFmθ波がFp1付近でも出現できるか否かについて検討し,学習時認知活動の指標としてFmθ波が有用であるか実験で確かめた。実験では安静かつ閉眼状態(Task 1),針穴に糸を通す作業を繰り返す状態(Task 2),皿にある豆を箸で移し続ける状態(Task 3),100マス計算を解く状態(Task 4)の4つのタスクに対する脳波の特徴を調べた。各タスクに対して,Task 1ではリラックスのα波が,Task 2~4では覚醒のβ波が,Task 4では学習時認知活動のFmθ波が,他のタスクに比べて増大する特徴が見込める。つまり,Task 1ではα波の増大によって精神的疲労の指標(θ/α)や覚醒の指標(β/α)が低く,Task 2~4ではβ波の増大によって特定の認知活動(Task 2:注意,Task 3:ストレス,Task 4:集中)の指標(β/α)が高く,Task 4では学習時認知活動の指標(Fmθ波)が高くなる傾向が予測される。また,同一被験者に対して,多極でも同様に4つのタスクを実施し,多極と比べて情報量が少ない単極の指標の検出性能についても確かめた。これらの実験を通して,Fmθ波は計算や記憶などの認知活動で現れた事実を見出した。
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今後の研究の推進方策 |
1年目の研究成果として,前頭部付近から学習活動の指標としてFmθ波に着目し,異なるタスクからその存在を確かめた。しかし,単極脳波計は多極脳波計と比べて,瞬きや眼球運動のよるノイズ混入がしやすく,確実なノイズ除去方法は確立されてない。これらの問題を解決するために,今後の研究では次の方法を考えている。多極脳波計を用いてFmθ波が出やすい測定位置を調べた上で,その位置にできる限り近くかつ,目から離れた測定位置を定めてノイズ混入を抑制したい。また,スマートフォンの動画から,被験者の瞬きや眼球運動を自動的に抽出し,リアルタイムでのノイズを除去したい。 一方,これまでの実験で用いたタスクは,計算問題中心の思考からFmθ波を確かめたので,韓国語のような語学学習への適用は更なる検討が求められる。また,実際の授業で利活用するために,より簡単に脳波が測定できる工夫も必要である。 そのため,今後はネットワークを活用し,複数人同時計測できるシステムを開発し,実授業の学習者の脳波を測定・分析について調べたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究1年目(2021年度)も、コロナ感染拡大の影響で,国内はもちろん海外の国際会議への参加ができなかったので,旅費の支出が0であった。まだコロナ感染が続いているので,2022年度に参加予定の国内・外の研究会が現地開催になるかは不透明である。
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