研究課題/領域番号 |
21K00725
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
佐藤 剛 弘前大学, 教育学部, 准教授 (40784038)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 語彙サイズテスト / テスト開発 / 語彙指導 / 小中連携 |
研究実績の概要 |
本研究では,①小・中学生を対象としたリスニングとリーディング形式の語彙サイズテストの開発を行い,②小・中学校を通した語彙サイズの測定を行い,その結果をもとに③小・中学生の語彙知識を反映した語彙リストを作成し,その実態と伸長の過程を解明することを目的とするものである。2年目にあたる2022年度は,研究実施計画書に則って,主に以下の調査研究を実施した。 まず,研究計画書上の調査3として,小学生用リーディング形式語彙サイズテストを全国の小学校の協力を得て試行テストを実施し,項目応答理論を援用したテスト項目分析から得られたデータをもとに,妥当性・信頼性を高いテストの改良を行った。併せて中学生用のリーディング形式の語彙サイズテストの施行を継続して実施することで,テストのさらなる改良を測ると共に中学生の語彙サイズについて,より一般化したデータの収集を行った。 2つ目として,初年度に作成した小・中学生検定教書コーパスおよび語彙リストを基に小・中学生用のリスニング形式の語彙サイズテストを開発を行った。テスト用の音声は,プロのアナウンサーに依頼してレコーディングを行い,テストのプロトタイプを作成した。県内の公立小・中学校を中心に試行テストを実施し,そのデータを基にリーディングテストと同様に項目応答理論を援用した項目分析により,テスト項目の入れ替えを行った。 小学校の実験結果をまとめた論文「デジタル版小学生のための語彙サイズテスト開発― 児童の語彙知識を反映した語彙リストを基に ―」は全国誌JES Journalに採択された。 また,テストの結果から小学生が実際に感じる難易度・小学生の語彙知識を反映させた語彙リストを開発し,ウェブ上で一般公開し,研究や教材研究の基礎資料として広く活用できる環境を整えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は,小・中学生を対象としたリスニングテストとリーディング形式の語彙サイズテストの開発を行い,そのテストを用いて,小学生と中学生の語彙の実態を明らかにし,教材作成や指導の基礎データを得ることを目的としたものである。 今年度はリーディング形式だけでなくリスニング形式のテストもプロのナレータに依頼してレコーディングを行うなどそのプロトタイプとなるものを作成することができた。さらに,新型コロナ感染拡大防止の影響も昨年度までと比較してあまり大きくなく,本学附属小・中学校だけでなく全国の公立校の協力を得て,試行テストを実施し,テスト改善のためのデータを得ることができた。 一方で,試行テストのデータから,リストの改善の必要性が示唆された。特に小・中学校とも低頻度語については教科書の題材の影響が大きく出ており,中には項目困難度が極端に低い語彙=本当に日本人学習者に必要であるのか疑問な語彙が含まれている可能性が示唆された。現在は,小・中学校の検定教科書を主なデータソースとして語彙の選定を行っているが,小中高連携という意味でも高等学校の英語の教科書をデータソースとして組み込む方向でリストの修正・改善を行いたい。 今後は,高等学校の英語の検定教科書のデータ化を行い,コーパスに組み込むことで質の高い低頻度語の選定を行う。さらに,現在実施しているリーディング・リスニング形式の試行テストを継続し,テスト改善のためのさらなるデータ収集を行いたい。
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今後の研究の推進方策 |
3年目にあたる2023年度は,以下の2つの調査研究を実施する。まず,2022年度の試行テストの結果から小・中学校とも低頻度語については教科書の題材の影響が大きく出ており,中には項目困難度が極端に低い語彙=本当に日本人学習者に必要であるのか疑問な語彙が含まれているなどテストの基となるリストの改善の必要性が示唆された。そこで,当初の研究計画にはなかったが高等学校の英語の検定教科書のデータ化を行い,コーパスに組み込むことで質の高い低頻度語の選定を行うことで,テストの基となるリストの改良を行いたい。 また,2022年度に開発したリーディング・リスニング形式語彙サイズテストのプロトタイプの試行テストを本学附属、公立小・中学校の協力を得て継続し,項目応答理論を援用したテスト項目分析から得られたデータをもとに,より妥当性・信頼性の高いテストの完成を目指す。さらに,テストのデータを項目応答理論による得られる項目困難度を等価すること,等化された項目困難度を基準に語彙リストを並べ替える作業繰り返すことで,CAT(Computer Adaptive Test)を開発するための基礎データとなるアイテムバンクの構築にも着手したい。 併せて,これまで新型コロナ感染拡大防止のため実施できなかったが,これまでの研究結果をまとめたものを国際学会で発表を行い,様々な有益なフィードバックを得ることで,それをもとに今後の調査研究をより良いものにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度および2年目に新型コロナ感染拡大の影響を受けて,予定していた小学校を対象としたテストの試行実験を行うことができなかった。また,研究手法及び研究結果について発表し,今後の研究についてフィードバックを得る機会として参加を予定していた以下の学会がオンライン開催または延期となった。全国英語教育学会第47回北海道研究大会:オンライン開催,第22回 小学校英語教育学会(JES)四国・徳島大会:オンライン開催 Vocab@Vic (ビクトリア, ニュージーランド):延期 2023年度は,発表を予定している多くの学会が対面での開催を予定している(第23回小学校英語教育学会(JES)近畿・京都大会,全国英語教育学会 第48回香川研究大会,Vocab@Vic)。そのため積極的に発表を申し込み研究について有益なフィードバックを得るために学会参加に係る費用に使用する予定である。 さらに,新型コロナ感染拡大のための措置も徐々に緩和されてきていることから,より多くの協力校を対象にテスト実施を依頼,または複数回の実施を依頼し,小学校・中学校の語彙サイズテストの改良を図りたい。その際にテスト用紙および結果のフィードバックを郵送するための費用として使用する予定である。
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