研究課題/領域番号 |
21K00727
|
研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
永井 典子 茨城大学, 人文社会科学部, 特命研究員 (60261723)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | Mediation / Bloom's taxonomy / CLIL / Critical thinking |
研究実績の概要 |
2023年度は、2022年度に実施したCLIL授業の批判的検証を行った。2022年度にBloom’s taxonomyの4つの知識タイプと6つ認知プロセスを基に、CLIL授業で育成する知識タイプと認知プロセスを特定し、それらを育成するための言語活動やタスクをCEFR/CV(COE, 2020)の能力記述文と関連付けながら開発し、さらにそれらの活動やタスクの評価基準を示したCLIL授業を設計し、実施した。2023年度は、このCLIL授業を、学生の授業の成果物、学生による授業評価、学生への質問紙調査、及び面接結果を基に検証した。その結果、授業で行ったグループ活動、主に討論でお互いの見解を批判的に検証することを困難に感じた学生が大半を占めた。学生は、どのように他者の意見を建設的に評価するのか、どのような視点から批判するのかがわからない場合が多いことが判明した。つまり、CEFRのCognitive Mediation(認知の仲介)や学生たちがお互いに議論しやすい環境を生み出すためのSocial Mediation(関係性の仲介)の能力記述文に基づくタスクだけでは、学生の批判的検証能力を育成するには不十分であることが判明した。CLIL授業の到達目標を明確にし、授業で扱う具体的なトピックに基づいて、授業前に行うタスク、授業で行うタスク、個人で行うタスク、グループ活動で行うタスクなどを具体的に決定することが有益であることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度は、前年度に行ったCLIL授業を授業評価及び学生への質問紙調査、面接等の結果を基に批判的に検証した。その結果、学生たちの批判的能力を育成するために作成した課題、及び協同作業は、十分ではないことが明らかになった。つまり、汎用的なCEFRのMediation の能力記述文を特定の授業内容にそって、より具体的なタスクにする必要があることが判明した。そのため、様々な授業シナリオを調査し、それらに即したタスクや協働作業を考案し、開発する必要性が生じたため、研究にやや遅れが生じている。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は、これまでの研究成果と授業実践の評価を基に、学生たちが様々なCLIL 授業のトピックに関して、協働して情報収集を行い、理解を深め、発展させるためのタスクの開発を行う。そのためにEnriching 21st century language education (North et al., 2022) で報告されている高等教育に於けるCLIL授業でのMediationの活動を精査する。また、2023年にヨーロッパ評議会から出版されたReflection Day Reportで述べられている行動指向主義とMediationの関連性についての議論や2011年にヨーロッパ評議会から出版されたGuidelines for task-based university language testingを精査する。そして、日本の高等教育に於けるCLIL授業で活用できるタスクを提案し、その評価方法も合わせて提案する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究が2021年に始まって以来コロナ禍のため、研究成果を海外の学会で対面で発表することが昨年度までできなかった。そのため、予定していた旅費を使用することができなかった。今年度は、これまでに行った研究の成果を8月にマレーシアのクアラルンプールで開催される第21回応用言語学会世界大会でワークショップを開催し、発表する予定である。また、CEFRのMediationを応用したCLIL 授業や課題の設計方法に関して、8月に名古屋市で開催される大学英語教育学会、11月に静岡市で開催される全国語学教育学会で発表することになっている。今年度はこれらの成果発表を行うための学会参加費及び旅費に使用する予定である。
|