研究課題/領域番号 |
21K00728
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
川島 智幸 群馬大学, 大学院保健学研究科, 准教授 (70759050)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 非母語話者英語 / なまり / intelligibility / 態度 / 教材開発 |
研究実績の概要 |
2021年度は、3つの研究を行った。研究1では、英語の聞き取りが非母語話者なまりによりどの程度難しくなるかを調べるため、64 人の大学生にセンター試験過去問50問を、母語話者によるオリジナル音声と非母語話者による再現音声を用いて解いてもらい、その正答率を比較した。再現音声では全体の正答率が約3%低くなったが、10%以上下がった設問が4つ、20%以上下がった設問が2つあった。特に正答率の低かった問題を分析した結果、正解以外の1つの選択肢に解答が集中している問題と、複数の選択肢に分散している問題があることが分かった。 研究2では、大学生38人を対象に、再現音声による正答率が特に低かった11問について、書き取りテストを実施した。その結果、解答に必要な情報を含む台詞を正確に書き取る割合が、他の台詞と比べ極端に低くなっていることが明らかになった。また、特定の非母語話者の台詞が聞き取れないという訳ではなく、一部の単語が聞き取れていないことが示された。 研究3では、ポーズの有無による聞き取りへの影響を調べるため、大学生113人を対象に調査を行った。再現音声を用いてリスニングテスト実施5週間後に、意味の切れ目にポーズを挿入した再現音声を使い、再度リスニングテストを行った。聞き取り状況は、グループ1では多肢選択問題を、グループ2では書き取りを用いて調べた。その結果、多肢選択問題ではポーズの有無による正答率の変化は見られなかったが、書き取りでは一部の非母語話者が話す台詞において、正確に書き取れる割合に有意差が見られた。 また、音質や演技力の影響を探るため、英語を母語としないプロの外国人ナレーターに依頼し、新たにセンター試験リスニングテスト50問の聞き取り用音声の再現にも取り組んだ。10か国44人の候補者の中から、なまりの強さと聞き取りやすさの評価に基づき10人の吹き込み者を選び、台詞の録音まで完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究に関しては、当初予定していたものを全て終了した。新たにリスニングテスト50問を外国人ナレーターで再現するプロジェクトについては、吹き込み者の選定と台詞の吹き込みまで終了した。音声編集ソフトを用いて録音した音声を編集し、センター試験で流れたオリジナルの音声と非母語話者による再現音声の2種類のリスニング用音声を作成する作業は、予定した期間内に終わらなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、まず1年目に終了できなかった音声の編集作業を行い、センター試験で流れたオリジナル音声と非母語話者による再現音声の2種類のリスニング用音声を完成させる。次に、それらの音声を使って、リスニングテストを実施する。また、再現音声にポーズを追加した音声を準備し、ポーズの有無による聞き取りやすさへの影響も調査する。併せて、なまりに対する肯定的な態度の育成に役立つ指導方法の研究も行う予定である。英語なまりに関する社会言語学的内容の文章を読んだり、そうした事柄を話し合うことが、学習者のなまりに対する態度にどう影響するかを調べる計画である。
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