研究実績の概要 |
本研究の目的は、母語にはない音素配列から成る未知語の学習が可能なのかどうかを検証することにある。Bernard (2017)の研究をもとに、第二言語学習者が無意味語(CVC)を学習する際に、頭子音と尾子音、および音節間をまたぐ子音の共起(CVC. CVC)も学習しているかどうかを調査した。2021年度および2022年度に行った研究成果を国際学会(20th International Congress of Phonetic Sciences, Prague)で発表した。 本研究では、4つの子音(F, P, D, Z)のいずれかの組み合わせを頭子音および尾子音に固定した、子音母音子音の音節(CVC)からなる2音節の無意味語の音声を960作成した。そのうち48の無意味語をトレーニング段階で2回調査参加者に聞かせた。実験1~4の実験段階では、それぞれの条件のもとに無意味語をトレーニング段階の無意味語と併せて提示し、「前に聞いた語か」どうかを選択させた。Yesと回答する率(誤答率)が高ければ、トレーニングで使用した対象子音の音節内位置の生起制限、または音節間の子音共起の制限を学習し、一般化したと考えた。その結果、日本語母語話者は、母語にない音節構造を持つ無意味語であっても、子音が生起する音節内の位置、および音節をまたぐ子音の共起を学習していた。さらに、単語内での生起制限ではなく、音節内の生起制限を学んでいることが分かった。しかし、尾子音がトレーニングと同じものと異なるものを提示したところ、尾子音の学習は見られなかった。日本語母語話者は頭子音に頼り、音節構造を学習し、音節間の子音共起も学習することが示唆された。
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