研究課題/領域番号 |
21K00768
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研究機関 | 大妻女子大学 |
研究代表者 |
服部 孝彦 大妻女子大学, 英語教育研究所, 教授 (40208541)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 教員研修 / 英語指導力 / 第二言語習得 / 臨界期 / 学習者要因 |
研究実績の概要 |
2020年度から実施されている新学習指導要領では小学校5・6年生に「教科としての英語」指導が求められ、児童に英語の4技能の力を身につけさせる必要がある。多くの小学校教員は英語力不足・指導力不足に直面していると同時に、早期英語教育指導者に必要な第二言語習得に関する知識も不足している。 本研究の目的は、小学校教員が効果的に「教科としての英語」の指導を、第二言語習得理論に基づき実施できるための、継続的に実施可能な研修プログラムの開発をすることである。研修では「教科としての英語」を担当する小学校教員が抱える授業実施にかかわる「不安要因」を特定し、「不安要因」を解消しながら英語の授業を実施するための英語力と指導力を身につけることが大切だ。しかし、研修はそれだけでは不十分である。 これからは小学校教員が早期英語教育を効果的に行うために必要な第二言語習得に関する基本的な専門知識を身につけていることが求められる。小学校に英語教育が導入された理論的根拠となっているのが臨界期仮説である。第二言語環境とは異なる日本のような外国語環境での、教育実践者にとって必要な臨界期に関する知識を整理する必要がある。また第二言語習得では学習者要因が重要な役割を果たしている。外国語環境で学習する日本では、内的要因がとても重要である。本研究では、第二言語習得理論の視点を踏まえた小学校教員に必要とされる知識を取り扱う英語教育学の本質を捉えた研修プログラムの開発を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度はコロナ禍のため、研究全体の進捗には遅れが少しではあるが生じている。特に対面で行う予定であった小学校教員へのインタビュー調査などの質的研究と小学校におけるモデル授業に関しては、コロナ禍のため当初の計画通りには実施できていない。ただし、小学校教員が早期英語教育を効果的に行うために必要な第二言語習得の専門知識に関する理論的研究についてはおおむね順調に進展しており、日本国内の学会の研究大会での研究発表と学術誌への論文発表は当初の計画通り進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2020年4月から小学校3・4年生では「外国語(英語)活動」が、5・6年生では「外国語(英語)」が本格的に実施されている。この背景となっているのは、第二言語習得研究 における外国語学習は早くから始めた方が効果的であるという考えである。この考え方の理論的根拠となっているのが臨界期仮説である。母語習得には臨界期があると一般的には認知されている。第二言語習得にも臨界期は存在するのかという問いに対し、研究者の間では、激しい議論が繰り広げられてきた。その結論については、いまだ確固とした合意は得られてはいない。しかし学習開始年齢が第二言語習得の成否に影響を与えることは多くの研究者が認めているところである。 2022年度は理論研究として、まず母語習得と臨界期仮説の先行研究を概観する。その上で第二言語習得に関する臨界期仮説の先行研究を概観し、研究動向を掌握する。そして臨界期仮説が今後解明すべき課題について、言語習得環境の視点から考察を行う。それらを踏まえ、日本における早期英語教育の有効性について、第二言語習得理論の立場から検討をし、その研究成果をアメリカの国際学会の研究大会で発表する。理論研究と並行して小学校教員研修のためのCLILの視点に立った教材の開発も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度当初の計画では、アメリカで開かれる国際学会の研究大会で研究発表の予定であったが、この国際学会研究大会が新型コロナウイルス感染拡大のため中止となり、計上していた旅費を使用できなかった。残金は次年度に繰り越し、2022年度は研究成果をアメリカの国際学会研究大会で発表し、その旅費として使用することを予定している。
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