研究課題/領域番号 |
21K00774
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研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
安達 理恵 椙山女学園大学, 教育学部, 教授 (70574052)
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研究分担者 |
樫本 洋子 四天王寺大学, 教育学部, 助教 (40835352)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | CLIL / 内容言語統合型学習 / 小学校外国語教育 / 国際交流 / プロジェクト型学習 / 異文化間教育 / 主体的・対話的で深い学び / 動機づけ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、1)主体的な学びの態度を育てるプロジェクト型CLIL指導案、2)異文化の相手との対話を促すCLIL授業の指導方法、3)主体的に学びを整理し深い学びを促すLap bookなどの教材を主体とした、CLILの教材開発と指導法である。2022年度は、ようやく小学校1校への訪問が可能となり、それに伴い、研究結果をまとめることができた。また引き続き、大学の教職課程で小学校の教員を目指す学生を主な対象として、授業内でCLIL(内容言語統合型学習)を取り入れた指導法の紹介や異文化理解を深める活動を紹介するワークショップを開いた。そして、学生の授業後の提出コメントについて分析した結果について、学会で発表した成果を論文に執筆し、いくつかの業績としてまとめることができた。具体的な成果の代表的なものに、他教科を英語で指導している公立小学校で、児童を対象に英語に対する態度や英語学習の目的意識、他者との関係性などを調査した「小学校での外国語による他教科指導の効果と課題―情意要因を中心に―」がある。また、外国籍児童について、日本語教育や日本語による教科教育の課題の観点から執筆をした。さらに、コロナ禍が落ち着いてきたこともあり、主にイタリアの研究者やCLIL実践者との交流を再開し、主体的・対話的で深い学びを促すCLIL教材・指導法について、共同研究を進める方向で協議をしている。 分担者の樫本は、勤務大学の近隣市内公立小学校において、「プロジェクト型CLIL」の指導案・教材を作成し、研究協力者の専科教員とともに、6年生3クラスで試行、その効果を検証し、学会発表・論文化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
まず本研究の目標の1)主体的な学びの態度を育てるプロジェクト型CLIL指導案については、昨年度はこれまでの論文を修正して再投稿することに時間を割いたため、新規の指導案を考えることは難しかった。一方、2)異文化の相手との対話を促すCLIL授業の指導方法については、複数の共同研究の小学校教員と異文化理解のための指導方法や異文化間交流を利用した実践について協議してきたが、そのような体験によって児童にどのような影響を及ぼすかの分析も、まだ途中段階である。また、3)主体的に学びを整理し深い学びを促すLap bookなどの教材開発については、Lap bookやその使用方法を、指導している教職課程学生に引き続き解説しているが、学生の指導者意識にどのような効果をもたらしたのか、以前と同様な分析結果が得られるのか更なる検証が必要である。なお、前々年度、小学校外国語授業における指導力向上に関する研究において、報告書で課題として述べた以下の点に基づき、今後も研究を進める。1)小学校で扱う外国語は英語だけで良いのか(特に異文化間教育の観点からも考察する)、2)児童のポートフォリオの継続的な使用を促すためには、どのような支援が必要か(特に教材やポートフォリオの内容について考える)、3)英語に対する苦手意識や指導経験年数が少ない初任教員や教職課程の学生に対して、CLILの導入を含め多評価方法(特に主体的・対話的で深い学びを促すための評価のあり方について)をどう支援するか。 なお、分担者の樫本は、博士論文の執筆と並行して、コロナ禍ではあったが、関西の公立小学校において授業案・教材開発を行い、研究協力者により、実践を行った。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は海外の研究者や国内でも遠方の実践者と少しずつ交流を再開するようになったものの、まだ十分な交流には至っていない。今年度は、さらに海外の学校や国内の小学校教員の共同研究者とより実効性のある研究を進める。また、昨年度は主に執筆に時間を費やしたため、まだ分析が進んでいない研究もあるため、分析を進める。また勤務先大学では、小学校教員を目指す学生が多いため、今後も、主体的な学びの態度を育てるプロジェクト型CLILについて、学生の指導者意識にどのような変化があったのかを検討する。なお、今後も、日本の教育状況にあったCLIL実践に対する教職学生の意識調査についての分析もさらに進める予定である。また評価に関しては、共同研究者とLap bookなどを中心とする、ポートフォリオの使用方法について、以前の科研研究から引き継いで進める。 また分担者の樫本は、今年度は研究協力者が中学校に異動となったため、これまでの実践の成果の検証を行うとともに、指導案の改善に努めるとともに、新たな協力者/校を開拓して改善案を考える予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021-2022年度はコロナ感染症のため、予定していた海外の小学校でのCLIL授業の見学や実践者との交流、および日本におけるCLIL実践者との対面の交流などが出来ず、海外の研究者との交流も一切できなかったため出張費はほとんど生じず、また以前の科研課題は今回の課題と共通点があり、前の研究費でも余剰が生じていたため、そちらを優先的に使用していた。しかし、2023年度はすでに海外出張が決まっており、さらに海外のCLIL研究者や実践者を招聘する国際研究集会も予定しているため、そのような研究活動に付随する経費(旅費、謝金、印刷費)に研究費を使用予定である。
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