研究課題/領域番号 |
21K00776
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
竹内 理 関西大学, 外国語学部, 教授 (40206941)
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研究分担者 |
田實 佳郎 関西大学, システム理工学部, 教授 (00282236)
植木 美千子 関西大学, 外国語学部, 准教授 (30737284)
宝田 隼 関西大学, システム理工学部, 准教授 (40637089)
脇田 貴文 関西大学, 社会学部, 教授 (60456861)
守谷 順 関西大学, 社会学部, 教授 (70707562)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 外国語学習不安 / 第二言語不安 / モーションセンシングデバイス / 質問紙 / 客観的評価 / 主観的評価 / 対面形式 |
研究実績の概要 |
2022年度は、2021度の予備調査の結果にもとづき、現実的な場面での測定を可能にすべく、対面形式(ぺア)でL2(英語)を使いながら課題をこなす場面(リスニングとスピーキングを含む)の不安測定について実証的に検討を加え、対面時での指標の変化の特性について理解を深めた。その結果、センシングディバイスによるリアルタイムの測定と、複数の心理尺度による定点測定の間に乖離があることが分かった。つまり、客観的尺度と主観的尺度の間に強い関連性が見られず、客観的な尺度(併存的妥当性は検証済み)では不安を感じつつも、他の心理的・社会的要因の影響を受けて、主観的評価がゆがんでしまう可能性が示唆された。ただし、心拍変動係数と社交不安得点を調査した母語での追加実験(対面形式)では、社交不安得点と会話開始前および会話終了後の心拍変動係数との間に正の相関が見られた(それぞれr = .40、r = .43)。心拍変動係数はストレスの増加と関連することから,社交不安者に見られる他者との会話に対する予期不安や会話後のネガティブなフィードバックが測定されたものと考えられる。また社交不安得点は会話中の腕の動きとも正の相関が見られた(r. = .39)。不安が高いほど、会話中に体の細かな振動や動きなどが見られることから、その結果を反映している可能性が高い。このような知見を組み合わせると、L2学習者自身の性格特性(特性不安の高さなど)や、その作業の中で課せられた役割(たとえば会話を主導する立場か否かなど)、およびL2への習熟度(それに伴う自動化の度合い)により、不安の主観的な知覚が変わるのではないかとの仮説が生まれ、次年度にこれらの変数も考慮した検証を行うこととした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた実験、ならびに測定の最適化の試みを、概ね順調に遂行することができた。2021年度は、コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大のため、実験については十分な配慮と対策を講じて行う必要があった。この対策のため、一部指標の測定に制約を設けざるを得なかった。そこで、これらの制約の影響の有無を確認するために、2022年度冒頭で再現実験を行い、結果の妥当性についてさらなる検証を行った。その結果、妥当性には大きな問題がないことが確認された。その後、本実験を行い、客観的知覚と主観的知覚の乖離という興味深いデータを得た。また、その結果を別角度から検証すべく、母語でのペアによる会話の追加実験も行い、この2つのデータから、新たな仮説(学習者自身の性格特性やL2習熟度、作業の中で課せられた役割により、不安の主観的な知覚が大きく変わるのではないか)が浮かび上がるなどの成果を得た。また、測定の最適化についても、指標の絞り込みという側面で成果が得られたほか、精度の向上も図ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
新たに形成された仮説、つまり「学習者自身の性格特性やL2習熟度、作業の中で課せられた役割(たとえば会話を主導する立場か否か)により、不安の主観的な知覚が大きく変わるのではないか」を検証すべく、これまでの実験データを見直し、再分析するほか、追加実験の可能性についても検討し、必要があればこれを実施する予定である。さらに、これまでの成果を、国内・国外の学会で発表し、さらには論文化して投稿する作業を鋭意推し進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は、コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大のため、発表および参加が予定されていた国内外の学会が延期されたり、オンライン開催となったりしたため、旅費面での出費を中心として計画の変更が必要となった。また、同様の理由で、実験を限定的に行い、結果に影響が出ない程度ではあるが、規模を縮小したため、人件費・謝金にも影響が出た。次年度は、国内外の学会の多くが対面の形態を採用していることもあり、旅費の利用が多くなるものと想定し使用計画を立案した。さらに、追加実験を実施した場合、規模(参加者、データ量、分析範囲)を本年度より大きめにする予定のため、データ分析に必要な人件費や参加者への謝金が大きくなるものと想定し、使用計画を立てた。
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