研究実績の概要 |
本研究は,①語彙学習を促す枠組みは何かを明らかにし,②語彙学習を促す要因を明らかにすることを目的としている。第二言語語彙習得の研究においては,二つの枠組み,Involvement Load Hypothesis (Laufer & Hulstijn, 2001, 以下ILH)とTechnique Feature Analysis (Nation & Webb, 2011, 以下TFA)が語彙学習・指導を考える上で有効なガイドラインとして提案されている。2つの枠組みは語彙タスクごとに数値化されており,その数値が高ければ高い方が語彙学習を促し,記憶に残りやすいとされる。 2022年度は予備実験を行い,学会発表をしたのち,論文化した。予備実験では,目標語(新出語)の学習において,(1)文中に空所があり,文脈から語群(目標語)を選ぶ空所補充群,(2)目標語を用いて英文を書く英文作成群に分け実験を行った。実験中,2群の学習時間は同じと設定された。 ILHでは語彙タスクの数値が(1)<(2)と設定され,(2)の方が学習記憶が残ると仮定された。一方でTFAでは数値が(1)=(2)となり,2つの群での学習記憶は同等になると仮定された。 予備実験の結果は,先行研究と同様にTFAを支持する可能性があるものとなったが,学習された記憶が短期的であったことや語彙タスクが参加者にとって難しい可能性があることがわかった。枠組み(ILH)の観点でいえば,認知負荷が高すぎるがために,仮説に基づかない実験結果になった可能性がある。そのため,2023年度は実験デザインを再考した上で,より大規模な実験を行っていく。
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