研究課題/領域番号 |
21K00808
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
河上 麻由子 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (50647873)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 唐風文化 / 天平文化 / 白鳳文化 / 唐前半期の文化 |
研究実績の概要 |
本年は、国風文化を分析する前提として、白鳳・天平文化の「唐風」に考察を加えた。唐風文化は一般に、嵯峨天皇から清和天皇の時代にかけて花開いた文化を指す。この時代には、漢文学が盛んとなり、儀式も唐風に改められた。しかし唐をモデルとしてその模倣と咀嚼に努めることは、弘仁以前にも熱心に行われていたのであり、正倉院宝物に代表されるように、奈良時代の文化が唐の文化の影響を強く受けていたことは常識となっている。 もちろん、白鳳文化・天平文化が唐をモデルとしたことをもって、これら時代の文化を一括して唐風文化と呼ぶことを提唱したいのではない。白鳳文化から国風文化に至るまで、それぞれの時代における様式上の特徴は異なっており、同一の文化として分類することは不可能である。 同じく唐を規範としながらも、白鳳文化・天平文化・唐風文化という様相の異なる文化が誕生したのには、様々な文化活動を日々繰り返す中で、日本古代貴族の間で「唐」に対する理解が深まったということがまずは想定されよう。 そのような日本側の背景とは別に、白鳳文化から天平文化が花開いた時代=初唐から中唐の文化的志向と、弘仁・貞観時代=中唐から晩唐にいたる文化的志向とが、中国において大きく異なっていたことも重要である。近年の唐代史研究において、安史の乱の前後で唐の社会状況がラディカルに変化したことが通説となっている。それだけではない。唐建国期の政治情勢に関する分析が進んだことで、初唐期の文化的志向に対する見直しも必要となっている。 そこで本年は、日本の貴族たちが憧れた唐の文化は、300年に近い唐王朝の歴史の中で、幾度も大きな変革を迎えていたことを踏まえつつ、国風文化・唐風文化を議論する前提として、白鳳から天平文化期の唐風について概観した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果はまとめて新書として発表したいと計画している。そのうち本年は、白鳳文化から;天平時代の「唐風」文化に関する原稿化し、濱田青陵賞受賞シンポジウムに合わせ、岸和田市のサイトにおいて無料で公開した。今後、加筆修正の上で新書の序章とする予定である。また関連する講演を2回実施しており、研究課題の遂行とその成果を一般へ還元することは一部達成できている。そのため、概ね順調に進展していると判断した。ただし、コロナ禍において、研究交流や踏査・調査はほぼ行えていない。また講演依頼が多く、雑誌論文として成果を発表することができなかった。来年度には大幅に改善させたい。
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今後の研究の推進方策 |
研究成果を英語圏においても発表するとともに、新書の執筆を進めたい。現状、序章(白鳳・天平文化)・第一章(弘仁・貞観文化)はおおよその考察が終わっている。右についてさらに検討を深めるとともに、国風文化の具体的な様相を先行研究によりつつ調査し、東アジア史の中に位置付ける作業を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、国内・国際学会に出席できなかったのみならず、国内外で実施予定であった調査も実行できなかったため。
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