研究課題/領域番号 |
21K00810
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中島 楽章 九州大学, 人文科学研究院, 准教授 (10332850)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ポルトガル / 東アジア / 中国 / 日本 / 朝鮮 |
研究実績の概要 |
本年度は研究課題に関するポルトガル・中国・朝鮮・日本史料の収集と調査を進め、その成果を研究論文として公刊し、また学会において発表した。研究論文としては、本研究の前提となる、16世紀を中心とする東アジア海域における交易や人の移動に関する全般的検討を進め、14世紀末の海禁・朝貢成立にいたる東アジア海域の海上貿易、15-16世紀の東アジア海域における貨幣流通、および14-17世紀のアジア海域における海上貿易の全体的動向などに関する論考を公刊した。また学会発表としては、1543年にポルトガル人が日本に到達後、翌1544年に福建海商の商船に同乗して日本に向かう途中、朝鮮に漂着した事件について、中国・朝鮮・日本・ポルトガル史料を併用して検討を加えた。 なお研究計画においては、本年度にはできればポルトガル・スペインにおいて史料・文献調査を行い。それが不可能であれば中国・台湾において調査を行う予定であった。しかし新型コロナの流行が長引いたことにより、本年度も海外渡航は難しく、海外での調査を実施することはできなかった。国内においては、東京において早稲田大学図書館などで文献調査を実施している。 また研究課題において必要とする図書は、科研費基盤研究(B)「16-17世紀、東アジア海域の紛争と外交――日本・漢籍・イベリア史料による研究――」(2017-2020年。研究代表者・中島楽章)において必要とする図書と共通しており、これらの図書は上記の基盤研究(B)の2021年度繰越金を用いて購入した。このため本研究課題の経費は使用していない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、本研究の主要課題である、16世紀におけるポルトガル人の東アジア海域(中国・日本・朝鮮)への来航過程について、その前提となる16世紀を中心とした東アジア海域の交易・交流の全体状況、およびポルトガル人が福建海商とともに1540年代に中国東南沿岸・九州・朝鮮に来航した具体的状況について検討を進め、その成果を論文や学会報告として発表することができた。これらの点で本研究はおおむね順調に進展しているといえるが、ただし新型コロナの流行継続により、本来予定していたポルトガル・スペイン、ないし中国・台湾における史料・文献調査を実施することができず、この点については予定通りには進捗していない。
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今後の研究の推進方策 |
来年度以降は、本年度における研究成果をふまえて、さらに16世紀初頭におけるポルトガル人の広東沿岸への来航過程と、それにともなう西欧式火砲(仏郎機砲)伝来とその影響、16世紀前期にポルトガル人が本国に伝えた中国情報、1540年代のポルトガル人の琉球・種子島・九州・朝鮮への到達過程と福建海商との関係、それにともなう火縄銃の伝播とその影響などに関する研究を進め、最終年度までに、16世紀前半におけるポルトガル人の東アジア海域来航過程を総合的に検討した専著の原稿を完成させることをめざしている。 そのためにはポルトガル・スペインなどにおける史料・研究文献調査を実施したいと考えているが、新型コロナの流行継続によりその実行が困難な状況が続けば、国内および中国・台湾・韓国などにおいて、可能な範囲の史料・文献調査を実施したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は研究課題に関するポルトガル語・スペイン語・英語・フランス語などの史料・研究文献の調査・収集のために、ポルトガル・スペインを訪問することを計画しており、それが難しい場合は、中国及び台湾において史料・研究文献の調査・収集を行う予定であった。しかし新型コロナウイルスの流行が収束しなかったため、本年度は海外調査を実施することが困難であった。また本研究課題に関連する図書や備品は、科研費基盤研究(B)「16-17世紀、東アジア海域の紛争と外交――日本・漢籍・イベリア史料による研究――」(2017-2020年。研究代表者・中島楽章)と共通しており、このため本年度は、上記基盤研究(B)の2021年度繰越金(70万円)により、本研究課題に必要とする図書や備品を購入し、本科研の経費は使用しなかった。 次年度には今年度使用しなかった経費80万円と、次年度経費90万円により、可能であればポルトガル・スペインにおいて史料・研究文献の調査を行いたいと考えている。ただし新型コロナウイルスの流行継続により、ヨーロッパでの調査が困難であった場合は、中国・台湾・韓国での史料・研究文献調査を行いたいと考えている。また同時に、国内諸機関での史料・研究文献調査も行い、研究課題に関連する図書購入・資料複写なども実施する。
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