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2022 年度 実施状況報告書

アジアの近代と「憧れ」の比較史 -「新しい女性」現象の伝染・潜伏・共振

研究課題

研究課題/領域番号 21K00812
研究機関大東文化大学

研究代表者

山口 みどり  大東文化大学, 社会学部, 教授 (00384694)

研究分担者 後藤 絵美  東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 助教 (10633050)
高 媛  駒澤大学, グローバル・メディア・スタディーズ学部, 教授 (20453566)
野中 葉  慶應義塾大学, 総合政策学部(藤沢), 准教授 (70648691)
李 美淑  東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 准教授 (40767711)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードジェンダー / 憧れ / 感情史 / 新しい女性 / アジア / 近代 / 移動 / 帝国
研究実績の概要

本研究は、「憧れ」という感情に注目し、「新しい女性」をめぐるさまざまな「憧れ」からアジアの近代を読み解こうとする感情史研究である。2022年度は論文集『憧れの感情史――アジアの近代と〈新しい女性〉』(作品社2023年6月刊行予定)刊行のための作業が活動の中心であった。研究協力者である中野嘉子香港大学准教授(2022年度後期からは東京理科大学教授)および宇野陽子氏にも参加していただき、14回に及ぶZOOMミーティングを通して、原稿を細かく検討した。
2022年度の研究課題は「憧れの「潜伏」」であった。「新しい女性」たちが抱いたさまざま「憧れ」は、往々にして実現までに時間を要し、周囲から秘匿する必要がある場合も多い。上記の作業に伴う本年度の議論から浮かび上がったのは、①理想に対して抱く感情である「憧れ」が、憧れの対象に対して自ずと従位に位置することになること。②また、理想に届かない可能性を含むことから、「逃げ・甘さ」を持つことである。②が示す一種の「緩さ」があるからこそ、長期間の「潜伏」に耐えることができるとの気づきが得られた。①からは「憧れ」という感情のジェンダー性についても議論が進んだ。従位性ゆえに女性が持つことが差し支えない感情とされていたと考えられる。
このほかに、メンバーそれぞれが個別に研究を進めた。山口は論文「アラクニーの娘たち」(『史潮』)において、19世紀イギリスの「保守的」な少女小説家のファン層のなかで起こった女性参政権をめぐる議論を分析した。また後藤はアラブの近代とフェミニズムの開花について、野中はインドネシアにおけるムスリマの衣服や女性の宗教実践についてそれぞれ分担執筆論文を著わした。李は「日韓連帯運動」と画家・富山妙子のメディア実践についての論文を発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2022年度の到達目標は山口みどり・中野嘉子編著『憧れの感情史――アジアの近代と〈新しい女性〉』(作品社)の刊行であった。COVID19が猛威を振るうなか、執筆者の事情が重なり、最終原稿の完成は少し遅れた。しかし2022年度中に初校の段階まで到達することができた。
その後は順調に進んでおり、刊行時期は2023年6月を予定している。

今後の研究の推進方策

2023年度は、「憧れの共振」がテーマである。具体的には東洋における「新しい女性」像の西洋への影響、フェミニズムとの関係を比較考察する計画である。『憧れの感情史――アジアの近代と〈新しい女性〉』の書評会を開催するほかに、本研究海外研究協力者で『憧れの感情史』執筆者のひとりであるルーシー・デラップ氏の来日(2024年度初頭)に合わせて国際シンポジウムを開くことを計画している。

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍の状況変化に伴う旅費の高騰などの理由から、山口は2022年度も海外での資料収集を控えた。2023年度には、資料収集のほかに成果報告のための国際シンポジウムを計画しており、海外執筆者の招聘等に使用する計画である。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (5件)

  • [雑誌論文] 「アラクニーの娘たち : 『マンスリー・パケット』誌の参政権論争にみる参政権意識の「大衆化」 」特集 「大衆化」の世界史 : 包摂と排除のはざまで2022

    • 著者名/発表者名
      山口みどり
    • 雑誌名

      史潮

      巻: 新91 ページ: 45-65

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 「境界を越える連帯と再帰的民主主義―「日韓連帯運動」と画家・富山妙子のメディア実践を中心に」2022

    • 著者名/発表者名
      李美淑
    • 雑誌名

      歴史学研究

      巻: 1028 ページ: 132-141

  • [学会発表] 「帝国の教会」と女性宣教師――「ミッションボックス」が探る支援の形2023

    • 著者名/発表者名
      山口みどり
    • 学会等名
      大東文化大学100周年記念シンポジウム1  ≪「帝国」を再考する―ーコンタクトゾーンの文化とジェンダー≫
  • [学会発表] 境界を越える連帯と再帰的民主主義―「日韓連帯運動」と画家・富山妙子のメディア実践を中心に2022

    • 著者名/発表者名
      李美淑
    • 学会等名
      歴史学研究大会
  • [学会発表] Qasim Amin and the roles of male intellectuals in the development of feminism in Egypt2022

    • 著者名/発表者名
      Emi Goto
    • 学会等名
      Workshop: Muslim Feminism Thoughts in the Early 20th Century: Qasim Amin and Tahar Haddad” : Research Project on Islam and Gender: Towards a Comprehensive Discussion(20H00085)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [図書] 言語文化とコミュニケーション2023

    • 著者名/発表者名
      宮代康丈、山本薫、今井むつみ、大堀壽夫、國枝孝弘、藤田護、髙木丈也、中浜優子、杉原由美、白頭宏美、藁谷郁美、鄭浩瀾、野中葉、西川葉澄、大木聖子、杉本なおみ
    • 総ページ数
      256
    • 出版者
      慶應義塾大学出版会
    • ISBN
      978-4-7664-2869-8
  • [図書] 流動する世界秩序とグローバルガバナンス2023

    • 著者名/発表者名
      神保謙、廣瀬陽子、加茂具樹、和田龍磨、土屋大洋、鶴岡路人、中山俊宏、國枝美佳、田島英一、鄭浩瀾、野中葉、ヴ、レ・タオ・チ
    • 総ページ数
      256
    • 出版者
      慶應義塾大学出版会
    • ISBN
      978-4-7664-2868-1
  • [図書] 記憶と記録にみる女性たちと百年2023

    • 著者名/発表者名
      長沢栄治、岡真理、後藤絵美、鷹木恵子、松尾有里子、服部美奈、山﨑和美、藤元優子、鈴木珠里、松永典子、山口みどり、千代崎未央、野中葉、酒井啓子、新郷啓子、中島由佳利、帯谷知可、高橋圭、松本ますみ、須永恵美子、藤元優子、見原礼子、木原悠、岡井宏文
    • 総ページ数
      296
    • 出版者
      明石書店
    • ISBN
      9784750355641
  • [図書] イスラーム文化事典2023

    • 著者名/発表者名
      八木久美子(編集委員長)、後藤絵美(編集委員・執筆者)、野中葉(執筆者) ほか
    • 総ページ数
      748
    • 出版者
      丸善出版
    • ISBN
      978-4-621-30766-3
  • [図書] 東南アジアのイスラームを知るための64章2023

    • 著者名/発表者名
      久志本裕子、野中葉 (編著)
    • 総ページ数
      404
    • 出版者
      明石書店
    • ISBN
      9784750355245

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公開日: 2023-12-25  

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