研究課題/領域番号 |
21K00815
|
研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
坂口 貴弘 創価大学, 公私立大学の部局等, 講師 (80462175)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | アーカイブズ / 公文書管理 / 文書館 / 電子メール / デジタル遺産 |
研究実績の概要 |
公文書管理改革の一環として、政府は公文書の電子決裁や電子媒体への全面移行の方針を打ち出した。大半の業務記録がデジタル方式で作成される現在にあっては、電子メールをはじめとする電子文書のうち、国立公文書館等へ移管すべきものを適切に選別し、保存・公開する制度や手法を確立する必要がある。 本研究は、電子文書の移管・保存・公開を可能にする包括的システムの構築に向けて、諸外国の制度や動向を分析するとともに、国内の都道府県・政令指定都市における現状を調査する。とりわけ、文書作成主体とアーカイブズ機関の連携に基づく「評価選別」のあり方に注目し、電子文書管理に適した評価選別制度の設計や運用に関する実践的ガイドラインを提示したい。 本年度は、新型コロナウイルス感染症の拡大が長期化したことに伴い、当初予定していた国内及び海外における訪問調査については、次年度以降に延期することを余儀なくされた。それに代わり、研究協力者をはじめとする関係者と、Zoomを用いたオンライン研究会を計7回にわたり開催した。それによって、今後の実地調査に向けた情報交換と意見交換を図るとともに、基本的な問題意識を共有することができた。 あわせて、本研究のテーマにおいて重要な位置を占める電子メールの評価選別について、アメリカ合衆国の状況を調査・分析した。その成果は、次年度当初に開催される日本アーカイブズ学会の大会において発表する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述の通り、本年度は、新型コロナウイルス感染症の拡大が長期化したことに伴い、当初予定していた国内及び海外における訪問調査については、次年度以降に延期することを余儀なくされた。 一方でそれに代わり、研究協力者をはじめとする関係者と、Zoomを用いたオンライン研究会を計7回にわたり開催した。研究計画の申請時には、このような研究会を頻繁に開催することは想定していなかったため、当初の予定を上回る進展をみることができた。研究会の開催日と発表タイトルは以下の通りである。 2021年8月15日 「電子文書の保存と評価選別制度の確立に向けた研究」について/2021年9月23日 地方公文書館における館と機能の議論について:1990年頃と2020年の引継移管を比較して/2021年11月7日 公文書管理条例制定状況概観/2021年11月28日 欧米諸国における評価選別実務の動向/2021年12月26日 評価選別―国際標準とNZの事例―/2022年2月6日 電子メールの評価選別をめぐる手法とその展開:米国における議論の分析から/2022年3月6日 デジタル化の現状と課題について 以上の要因から、全体としてはおおむね順調に進展しているものと評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)国内調査 公文書館を設置している自治体または公文書管理条例を制定している自治体を対象に、公文書の評価選別・保存・公開の制度や基準、及び電子行政文書や電子メール等の扱いについて調査し、資料を収集する。質問紙調査を基本としつつ、特色ある取り組みを進めている自治体等については訪問による面接調査や情報公開請求を通じて情報を収集する。 (2)海外調査 電子文書の管理について先進的なアメリカ、近年この分野の改革が進むイギリスを対象に、まず各国の中央政府アーカイブズの調査で全体的動向を把握する。あわせて、本研究のテーマにつき特色ある取り組みをしてきたアーカイブズ機関を調査する。調査にあたっては、研究協力者として各国のアーカイブズについての知見や人脈が豊富な研究者と分担して共同調査を行うことで、調査の円滑化と深化を図りたい。 (3)文献・規格調査 海外調査と前後して、国内の図書館等に所蔵のないARMA International機関誌等の専門文献や、文書管理・アーカイブズ関連のISO規格、ガイドライン等を分析し、日本における取り組みと比較分析して、電子文書の評価選別をめぐる論点や課題を抽出する。 (4)研究成果の発表 上記の成果をもとに、国内外の複数の学会で発表を行うとともに、各国のアーカイブズ学研究者と議論を深める。その内容を発展させた論文を学術雑誌に投稿する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、新型コロナウイルス感染症の拡大が長期化したことに伴い、当初予定していた国内及び海外における訪問調査については、次年度以降に延期することを余儀なくされた。またオンライン研究会についても、Zoomを用いた開催のため交通費等は支出しなかった。そのため次年度使用額が生じた。
|