研究課題/領域番号 |
21K00828
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
高橋 修 茨城大学, 人文社会科学部, 教授 (40334007)
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研究分担者 |
高木 徳郎 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (00318734)
菱沼 一憲 國學院大學栃木短期大学, その他部局等, 教授 (40399267)
田中 大喜 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (70740637)
清水 亮 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (90451731)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 茂木氏 / 茂木保 / 現地調査 / 五輪塔 / 板碑 / 旧公図 |
研究実績の概要 |
まず研究開始にあたり、第一回研究会を開催した。研究分担者、茂木町教育委員会、地元研究者等関係者に研究計画を説明した後、高木徳郎「2020年代の荘園調査は何を課題とすべきか」、田中大喜「益田荘・長野荘調査の概要」の報告があり、当科研の方向性について議論することができた。「茂木文書」について、主に料紙を中心に、専門の研究者の助言により多くの事実を解明できた。 中世武家領主・茂木氏の本領である茂木保故地の城郭遺跡や石造物についての調査を進めることができた。城郭遺跡については、茂木氏の本城である茂木城の縄張りについて現地踏査し、「オブッサンミチ」(御仏参道か)と呼ばれる茂木城と茂木氏菩提寺・能持院とを結ぶ古道の痕跡を発見した。未調査の安養寺「源頼朝墓」(五輪塔3基、宝篋印塔2基)を計測・撮影し、その年代観について、15世紀代と確定するに至った。同寺近隣の瑞岩寺にさらに年代を遡る大型五輪塔が存在することを確認するに至った。また北高岡地区の民家裏に五輪塔群があるとの情報を得て現地調査を実施し、小型の中世五輪塔を概数で30基以上を確認した。さらに坂井地区の民家裏に武蔵型板碑二基を確認した。そのうち一基には「文保」の年記も判読できた。 現地調査の基礎資料とするため、茂木町財務部が所蔵する旧公図を調査した。その結果、地租改正時に遡る旧公図が体系的に残されていることが判明し、字切り図の他に大字レベルの集成図が保管されていることも確認できた。その後、文化財撮影に精通した研究者の指導を受け、茂木保に含まれる地域の集成図(大型絵図)40点ほどを、茂木町に隣接する茨城県常陸大宮市の文書館のスタジオを借用して撮影、データ化することができた。 今年度の研究・調査により、次年度以降、茂木保故地の水利や耕地、石造物について、現地で踏査・確認するためのデータはほぼ整ったといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
茂木町教育委員会や地元研究者、茂木文書研究会(茨城大学中世史研究会)の協力により、おおむね順調に研究を進めることができた。ただし当初より、新型コロナウィルス感染拡大の影響が懸念されたため、移動距離の短い地域に居住・勤務する協力者とともに、比較的小規模な調査を積み重ねることに主眼を置くこととなった。研究分担者を交えた研究会も、同じ懸念により、第一回研究会をオンラインで開催し、第二回の開催を延期せざるをえなくなった。特に、他都県・他市町村からの共同研究者・協力者が各集落に入り、水利や耕地の現況等を、聞き取りも含めて調査することは、こうした状況においては難しかったので、今年度の実施を見送っている。 そうした中にあっても、特に石造物等は基礎調査が進んでいない地域であることもあり、大きな発見があった。また旧公図(大字集成図)の撮影は終えることができ、現地で調査を進めるデータは蓄積・整理されつつある。
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今後の研究の推進方策 |
茂木保を構成するいくつかの集落について、水利や地名・伝承について、現地調査を実施する予定であり、現在、茂木町教育委員会と調整中である。地形図とともに、今年度撮影した旧公図(大字集成図)をベースマップとして用い、聞き取り調査等の手法を交えて、水利体系を復元し耕地・宅地ごとの伝承や俗称地名の収集、石造物や寺社(その所蔵品も含む)等を悉皆的に把握することに努めたい。 茂木保全域における城郭遺跡の分布・縄張り調査も、引き続き推進したい。地元研究者から東茂木保に属する檜山地区(常陸大宮市檜山)に本格的な山城跡の遺構が確認できた旨の情報が寄せられており、これについても実地調査・縄張り図の作成を進めたい。 またできるだけ早期に第二回研究会を開催する予定である。「茂木文書」料紙調査の成果報告や、他地域で実施されている荘園現地調査の実情などをめぐる情報交換、本科研と問題意識を共有する田中大喜編『中世武家領主の世界』(勉誠出版、2021)の書評会、本科研の成果の一部が反映されている高橋編『戦う茂木一族』(高志書院、2022)の書評会などを、内容に盛り込みたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症対策として研究会や現地調査を実施できなかったため、共同研究者が調査地(栃木県茂木町等)や研究会開催地まで移動するための旅費、そこで調査に使用する物品購入費等が執行できなくなった。そのため次年度使用額が生じた。次年度においては、同感染症の収束が見込まれるため、前年度執行できなかった同様の経費について、確実に使用したい。
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