敗戦後から平成期に至るまでの広範な時期の象徴天皇制とメディアに関する史料を多数収集し、その分析を試みた。 特に、第一に新聞や雑誌などから象徴天皇制をめぐる報道に関する記事を抽出した。新聞だけではなく、月刊誌や週刊誌など様々なメディア媒体を閲覧したことはこれまでの研究にはない側面だと思われる。さらに、テレビやラジオなどを含めて、敗戦後の様々なメディア媒体を対象として扱った。時に緊張関係を有しながら報道が展開されている様子、時にある種の「蜜月関係」である状況などがそうした史料からは浮かび上がってきた。 第二に、メディア関係者に聞き取りを実施し、メディア側からの象徴天皇制に関する報道の意義を明らかにした。従来、こうした方向性(メディアの伝える側)から検討されてきたことはあまりなかったゆえ、本研究の大きな柱であるとともに、新規性の一つとも言える。メディア関係者が個人的に所有している史料についても閲覧するなど、これまで残りにくかった記者の史料を閲覧し、分析した。 第三に、宮内庁関係者からも聞き取りを行い、伝えられる側の思考をも明らかにしたことである。この方向からのアプローチをとることで、伝える側の第二の点との関係をより複眼的に明らかにすることができたと考える。 以上のような研究実績を書籍として公表して、まとめる作業を行った。2025年中に出版する予定で、社会に研究成果を還元するとともに、社会的な批判を受け、より研究課題をブラッシュアップするように心がける。そして、現在や今後の象徴天皇制を考える手がかりとする。
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