最終年度となる2023年度は、宮崎龍介の旧蔵で彼が生前に関わった各無産政党に関する資料を整理・目録化し、京都大学人文科学研究所紀要『人文学報』に「宮崎家所蔵宮崎龍介関係資料目録」の題で投稿した。目録は現在校正中で、6月頃の刊行を予定している。同資料は本邦未発表となる資料も含まれる貴重な資料群であり、その公開は本研究課題のまとめに相当する成果となる。近年、基礎研究が疎かになりがちな学術界に貢献しうると考えている。これ以外にも、宮崎龍介に関する研究を推し進めた。1 2023年11月に孫文が設立した中山大学人文高等研究院の招待を受けて、シリーズ講演会「中日近現代哲学思想的交匯」に講師として参加し、「中国革命にみる日中交流」の題で宮崎滔天・龍介親子の日中交流事業について中国の教員・学生を前に講演を行った。その後の質疑応答も活発であった。2 上記の宮崎龍介旧蔵の無産政党関係資料を一部用いながら、宮崎が参加した社会大衆党の結党過程をまとめた「社会大衆党結党過程の検討」を法政大学大原社会問題研究所・榎一江編著『無産政党の命運 日本の社会民主主義』(法政大学出版局、2024年3月)に発表した。旧来の社会大衆党研究で見すごされてきた結党経緯を多面的に明らかにすることで、社会大衆党観の転換を提起した。以上の成果を含んで、研究期間全体では、宮崎龍介関係資料の整理と目録化、公開を推し進めつつ、これまで研究の乏しい宮崎龍介に関する新たな側面を実証的に提示するということを目指して行ってきた。
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