・最終年度においては、第1・第2年度に蒐集した史料の読解・分析を進めつつ、全体の総括に関わる作業を行った。 ・とりわけ遊女屋の経営形態が変化する画期として15世紀前半から半ばの状況に着目し、当時の遊女屋について豊富な記述を残した一休宗純のテキストを中心に分析を進めた。その成果は2025年11月の「一休フォーラム」において報告予定である。 ・遊女社会の変容と再編成がもたらす帰結としての遊廓形成に着目し、一般書の執筆を進めている(吉川弘文館より出版予定、刊行未定)。最終年度においてはその成果の一端を朝日カルチャーセンター名古屋教室で一般向けに講義するなど(2024年1月24日~3月27日、「遊廓の形成」)、アウトリーチ活動と並行して議論のブラッシュアップを図った。 ・また最終年度には、これまで蒐集した奈良興福寺・春日社史料を用いて、奈良の遊女・遊女屋に関する基礎的な分析を進め、その成果を「中世奈良の遊女と遊女屋」(2024年1月22日、奈良大学)、「中世遊女の仕事と身分」(2024年2月20日、島根県立古代出雲歴史博物館)などの形で一般向けに講演した。 ・研究期間全体を通じて、15・16世紀を中心とした遊女社会の再編成過程について分析を進め、その成果の一端を、「京都・奈良における遊女集団の展開と権力」「中世後期の遊女屋をめぐる社会観念」などいくつかの論文にまとめた。前述した一休フォーラムでの報告や一般書など、本研究の成果は今後も引き続き公表予定である。また、蒐集した史料を基に、その前段階としての遊女屋の在り方、顧客となる春日社関係者の性愛行動についても分析を深め、「鎌倉期の春日若宮と遊女集団」「異形と懸想」などの論文を公表した。中核となる論文を第2年度に公表できたことにより、より時代を拡げた分析が可能になったものであり、総じて、期待以上の成果があったと考える。
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