研究課題/領域番号 |
21K00845
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研究機関 | 和歌山県立博物館 |
研究代表者 |
坂本 亮太 和歌山県立博物館, 学芸課, 主任学芸員 (40435904)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 法燈国師(心地覚心) / 臨済宗法燈派 / 興国寺 / 孤峰覚明 / 渓雲至一(至一上人) |
研究実績の概要 |
今年度は、法燈国師(心地覚心)と法燈国師が開創した由良興国寺(和歌山県由良町)に関する文書・記録・頂相(画像)の調査を中心に実施し、法燈国師の足跡、興国寺の動向、興国寺の末寺とそれに関する資料の把握をすることができた。 具体的には、①法燈国師の基本資料である和歌山県立博物館所蔵の由良鷲峰開山法燈円明国師之縁起と鷲峰開山法燈円明国師法語のテキスト化が完了した。さらに、興国寺本・龍仙寺本など各種写本の把握をすることができ、史料校訂に向けての準備が整った。②由良興国寺文書(和歌山県立文書館寄託)のなかから、法燈国師の足跡、美術資料(絵画)、中世興国寺の動向、興国寺の末寺帳などの資料を抽出したうえで、それらの調査・撮影を行った。特に、興国寺の末寺帳や末寺の什物リストから、今後の資料調査の対象地を絞り込むことができるなどの成果があった。③紀州・和歌山県内の法燈派関係寺院のうち、本恵寺(和歌山市)・円明寺(和歌山市)・神宮寺(紀の川市)・誓度院(紀の川市)・長楽寺(有田川町)・長谷寺(由良町)・松巖院(新宮市)・大通寺(三重県紀宝町)に残る法燈国師像および法燈派禅僧関連資料(頂相・古文書など)の調査・撮影をおこなった。なかには学界未紹介の中世に遡る頂相も確認することができた。 紀伊半島以外の地域では、信濃・越中を中心に臨済宗法燈派関係地の故地の踏査、および資料調査を実施した。④信濃(長野県)では佐久安養寺・戸隠神社・青木村龍仙寺周辺の踏査を実施し、龍仙寺では法燈国師像・法燈国師法語・袈裟・縁起などの関連資料の調査・撮影をおこなった。⑤越中(富山県)では、国泰寺にて法燈忌の見学、および伝法燈国師像・伝三光国師像の確認をおこなうとともに、法燈派寺院の多かった放生津故地の現地踏査をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
調査の予定が新型コロナウィルスの感染状況に大きく左右され、計画的な調査を実施することができなかった。調査先から調査受け入れ延期の申し出があるなど、調査の予定が変更になったこともあり、当初予定していた調査の時期が年度下半期にずれ込むこととなった。資料調査自体が遅れた結果、資料の翻刻・校訂などの作業自体が年度末まで遅れることになり、本年度末にまとめを予定していた史料集を作成することができなかった。次年度に展示とあわせて成果を公表するつもりである。
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今後の研究の推進方策 |
次年度には、本研究の成果の中間報告を、和歌山県立博物館において企画展「法燈国師」として公表し、あわせてに調査成果を紹介するリーフレットを作成することで研究成果の社会還元をおこなう予定である。 また引き続き、調査を進めることができていない和歌山県内の法燈派関連寺院(興国寺や観福寺など)、さらに関東地方や東北地方の法燈派関連寺院・故地の現地踏査、資料調査などを予定している。全国的な視点で関連寺院の調査・資料収集検討により、孤峰覚明や抜隊得勝など法燈国師(心地覚心)の弟子たちの動向など、臨済宗法燈派の地方展開の様を把握することも可能になると考えている。 紀州における法燈派教団の動向を明らかにすること、および法燈派の地方展開のあり方(広がり)を明らかにする論文を作成していくつもりである。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に紀州鷲峰開山法燈国師之縁起および鷲峰開山法燈円明国師法語の史料集の作成を予定していたが、校訂に使用する資料の調査が遅れこと、また和歌山県立博物館所蔵資料については画像がインターネット公開されることになったため、計画を変更し、次年度にテキストを載せた史料集と調査記録のリーフレットをあわせたものを作成することにしたため、使用額が変更になった。
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