研究課題/領域番号 |
21K00855
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研究機関 | 共愛学園前橋国際大学 |
研究代表者 |
野口 華世 共愛学園前橋国際大学, 国際社会学部, 教授 (40634647)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 待賢門院 / 待賢門院領 / 周防国玉祖社 / 丹波国波々伯部社 / 王家領荘園 / 中世荘園成立史 / 中世荘園 / 女院領 |
研究実績の概要 |
2023年度の研究として、前年度に引き続き、「待賢門院発給文書一覧」と「待賢門院領一覧」をふまえて「待賢門院史料集」の作成を行った。完成には至らなかったが、ここから立荘に関わった人々と待賢門院に人的に奉仕した人々と重なるメンバーの抽出と検証を実施し、「待賢門院院司・立荘関係者データ」の作成に着手した。特に立荘関係者データについては、現地調査の結果、関係者の範囲を広げることができた。 地域社会での現地調査に関しては、周防国玉祖社の調査を実施した。加えて、「待賢門院領一覧」や、これまでの現地調査により得られた新たな知見から、丹波国波々伯部社の調査が必要となったため、これも実施した。周防国玉祖社の調査では、同じ文化圏に宣陽門院領秋穂荘があることがわかり、また周防国一宮である玉祖神社を中核として、荘域であった田島・高畠(伊佐江)・小俣地区に、現在もそれぞれ玉祖神社があり、そこがそれぞれの中心地であったことが窺われた。丹波国波々伯部社の調査では、やはりほぼ同地域とみなせるところに、八条院領多紀荘があった。また波々伯部地区では、平安仏である薬師如来像が地域の方々に守られていることがわかり、さらには見せていただくこともできた。両地域において、地元の方々をはじめ、自治体や資料館で有用な地図や資料・情報を得ることができた。 2022年度までの研究で、地方における待賢門院領荘園の隣接荘園に注目すべきという仮説にたどり着き、2023年度の調査・研究ではそれをさらに裏付ける結果を得ることができた。当初の学術的「問い」「白河院政末期の女院号付与と女院領形成が鳥羽院政期にピークを迎える中世荘園成立の先駆的役割を担ったのではないか」という問いに対して確信的な回答をする目処がたった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度の現地調査の遅れから、2023年度にその遅れた部分を実施したこと、また新たな知見により、さらなる現地調査が必要となったことから、それらの調査をまとめる時間をとることが難しかった。また、新たな知見により「待賢門院院司・立荘関係者データ」も見直しが必要となり、「待賢門院史料」とのすり合わせも、再検討する必要がでてきた。以上のように、実際の調査はほぼ終わっているが、本研究の成果を総合的に検討し、まとめるという部分が残ってしまったためである。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度までの現地調査の成果をまとめる。「待賢門院院司・立荘関係者データ」も見直しが必要となり、「待賢門院史料」とのすり合わせを行う。以上の結果を、総合的にまとめる。必要があれば現地調査の補足調査を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度の現地調査の遅れから、2023年度にその遅れた分の現地調査を実施したため、また、新たな知見からの現地調査も実施したため、これらの調査をまとめられなかった。さらには、文献調査のすり合わせ、それをふまえた、先の現地調査結果としての、総合的な成果報告を作成できなかったためである。 したがって、2024年度は上記を総合的にまとめた研究成果報告書を作成する。残額は全て調査報告書の作成費用として使用する。
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