研究課題/領域番号 |
21K00859
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
森 亜紀子 同志社大学, 研究開発推進機構, 嘱託研究員 (30772727)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 境界史 / 沖縄近現代史 / 南洋群島 / 帝国 / ライフヒストリー / ジェンダー / エゴドキュメント |
研究実績の概要 |
本年度は、本研究が主軸に据えている首里旧士族・キリスト教徒・南洋群島引揚者という沖縄社会の境界に生きたある女性(徳村光子)のライフヒストリーの帝国期の部分を明らかにすることを課題とした。 具体的には、京都大学・同志社大学に所蔵されている沖縄近代史・南洋群島にかかわる文献史料によって徳村光子が生きた時代・状況に対する理解を深めるとともに、これまでに那覇市歴史博物館(徳村光子史料)から得た個人史史料を分析し、首里から東京、東京からサイパン、ヤップ、パラオ、テニアンへと就学・結婚を経緯に移動を重ねた彼女が、その時々に何を見て、どのような他者接触を経験したのかを検討した。彼女は帝国時代の経験をほとんど書き残していなかったが、南洋時代の写真を多く遺しており、これらの写真が彼女の帝国経験を知るうえで非常に貴重な手掛かりとなることが分かった。 そこで、太平洋世界における他者接触をテーマにしている国立民族学博物館の共同研究会で「写真から首里女性の帝国経験の内実を検討する」報告を行い、文化人類学を専門とする研究者から貴重なコメントを得た。調査・報告の成果の一部は、ジェンダーと植民地主義について検討した共著の論文集・高雄きくえ編『広島 爆心都市からあいだの都市へ』(インパクト出版会、2022年)に一論文として収録・公表された。国立民族学博物館で報告した内容も、現在論文化している最中であり、共著の論文集として近々公表される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は関西での史料調査とこれまでに那覇市歴史博物館で行った調査から得た史料をもとに、対象としている女性の帝国経験に関する研究報告・論文執筆を行うことができた。彼女が戦後沖縄に引き揚げた後にどのようにして洋裁学校を立ち上げ、どのように占領期を生き抜いたのかについては十分に検討できなかったが、これは来年度に取り組むこととしたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、那覇市歴史博物館で未見の徳村光子史料を閲覧・収集するとともに、沖縄県公文書館でUSCARの沖縄占領政策において女性・洋裁業がどのように位置づけられていたのか調べ、戦後にまで踏み込んだ検討を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染が十分に収束しなかったため、沖縄での史料調査・ご家族へのインタビューを実施することができなかった。新型コロナの5類への移行によって沖縄での調査・インタビューを実行するハードルが下がったため、繰り越し分は、沖縄で本格的な調査を行うための旅費として使用する。
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