研究課題/領域番号 |
21K00861
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研究機関 | 大手前大学 |
研究代表者 |
岸本 香織 大手前大学, 付置研究所, 客員研究員 (40440903)
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研究分担者 |
原口 志津子 奈良大学, 文学部, 教授 (40208666)
岡 佳子 大手前大学, 総合文化学部, 教授 (50278769)
高鳥 廉 北海道武蔵女子短期大学, その他部局等, 講師 (70899674)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 日本史 / 比丘尼御所 / 尼寺 / 女性 / 触留 |
研究実績の概要 |
本研究は、尼門跡所蔵の古文書調査を続け、尼寺文書研究会を開催し「総持院触留」を講読・翻刻して基盤研究を行うとともに、近世、近代の史料をもとに尼門跡の尼僧たちが行った寺院経営の実態、世俗の女性を中心にした支持者たちの姿を明確にする。それらが尼門跡のみならず、一般の尼寺とも共通するかという問題を考え、戦後を生きた尼門跡の現在の住持が寺をいかに維持したかの聞き取り調査を実施する。そうして、近世、近代の尼門跡史料の分析を中心に、領域と時代を超えた研究を行うことを目的としている。 令和5年度は、光照院調査を2回(9月4~6日及び2月2~4日)計6日間行った。今年度調査では、日記39冊分約6,700コマの撮影を行った。さらに、一昨年度行った光照院門跡への聞き取り調査の内容を取りまとめて原稿化し、その校正を進めている。同じく初年度に作成を終えた近代文書の調査書約180点についてもデータ整理を行い、目録化を進めている途中である。 また尼寺文書研究会を10回(4月15日・5月27日・6月17日・7月2日・8月5日・10月7日・11月19日・12月3日・1月7日・3月10日)開催した。慈受院蔵「総持院触留」は、朝廷・幕府から武家伝奏を通じて比丘尼御所に発給された触等を書き留めたものであり、尼門跡寺院では類例がない貴重な資料である。研究会では、触留帳の明和6年(1769)から明和8年(1771)の3冊分の翻刻を終えた。当該期は、現在において最後の女帝と言える後桜町天皇から甥の後桃園天皇への譲位が行われた時期であり、極めて興味深い資料となっている。 上記を踏まえた「尼門跡寺院経営の実態研究」や「尼門跡支持者の研究」及び「一般尼寺との比較研究」の個別研究に関しては、各自が研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光照院文書調査では、過去に未調査のままであった近代文書の調査書作成を終え、目録化の作業を進めている。目録化作業従事者の確保が難しく、進捗については順調とは言い難い面がある。日記の撮影は予定以上の39冊約6,700コマを撮影、極めて順調に進んでいる。但し、撮影データ整理作業は、こちらも内容を把握して作業できる人員の確保が難しく、撮影量に比して整理作業は遅れがちである。更に、整理作業を進める途中で、再撮影が必要となる部分があることも判明した。また、令和3年度に実施した光照院門跡への聞き取り調査の内容も取りまとめて原稿化を進めている。 慈受院蔵「総持院触留」の翻刻については、参加人数が限られることから、順調とまでは言えないが、ほぼ予定通りに約3冊の翻刻を終えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの年度からに引き続き、光照院文書調査を行う。令和6年度は年1回を予定している。日記の撮影については、1回あたり2,500コマ前後の撮影を進め、文書の撮影準備も進める予定である。あわせて得浄明院の伏見誓寛氏への聞き取り調査も調整して進める。 また慈受院蔵「総持院触留」の翻刻についても、今後も予定通り、令和6年度には1冊の翻刻と校正・編集作業を行って、報告書としてまとめる予定である。 尼寺の経営と支持者の実態に関する各自の研究課題は、個々に研究を深化し、報告書にまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症蔓延の影響により、初年度以降、調査データ等整理作業の依頼が困難であったことから、謝金の支払いも遅れており、残額が生じることとなった。 現在、僅かずつではあるが作業は進んでおり、謝金の支払手続きも手配しているため、研究への支障はなく、基本的な使用計画に変更はない。 次年度は最終年度となるため、これまでの年度同様の寺院調査及び資料調査や研究会参加の旅費、これら研究推進のために必要な消耗品等物品購入費、研究会作業及び調査データ・撮影写真整理作業の謝金、研究会会場費として使用に加え、報告書の印刷及び発送費としての使用を予定している。
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