研究課題
基盤研究(C)
本研究の成果として、近代法体系の法理が福山義倉社の運営実態を大きく組み替えていったことを実証した。廃藩置県後、領主規制から解放された義倉社は、金融業と地主経営を主軸としつつ、経営者とその拠点地域への利益誘導を第一義とした結社となっていたが、取引の安全や所有権の確定を志向する近代法体系の形成により、その営利的な性格が矯正され、義倉社が地域貢献を拡充させていったことを実証した。以上の研究成果については、査読付き学術雑誌『社会経済史学』(90巻2号、2024年)に掲載されることが決定している。
日本史
本研究の成果として最も強調されるべき学術的意義は、法制史研究と地域社会史研究を統合した分析手法を確立したことである。具体的に言えば、法理論が義倉社に与えた影響を論じつつ、地域の多様な史料を総合的に検討したことにより、分野横断的な研究成果を挙げることに成功した。近年、法理論と実体経済の関係を問題にする研究が盛んであるが、それらが法制を経済発展に適合的なものとして捉える傾きがあったことに対して、本研究は、法制整備による公共性の拡充を明らかにするという新たな論点を付け加えるものであった。