日本史上最高の文化を現出させたうえに、史上稀な平和な時代を続けた平安時代を研究することは、きわめて重要なものであると考える。しかし、これまでは『源氏物語』に象徴される文学作品を通して、この時代をイメージすることが多かった。 歴史・文学研究における史料としての古記録の重要性は、繰り返すまでもないが、これまでは一部の専門家を除いては、十分に利用されていなかったというのが現状であった。本研究においては、平安時代の漢文日記である古記録の中で、宇多・醍醐・村上という三人の天皇によって記録された、三代御記(三代天皇御記)と称されるものについて、他書に引用されて残された逸文の史料的価値を検討した。 そして三代御記の逸文である可能性があるものについて、精確な本文を確定し、その訓読文を作成して、テキスト・データベースとしてアーカイブス化することによって、内外の研究者・国民の利用における便宜をはかった。 後世、「延喜天暦の治」と賞讃されたこの時期において、天皇自身の筆によって、正確な実像を伝えてくれている三代御記は、政事・儀式の慣例典故を徴すべきものとして特に尊重された。本研究は、その価値を甦らせ、正しい平安時代認識を導こうとした。 三年間の研究によって、宇多・醍醐・村上三代天皇御記の逸文を含めた全文について、本文を確定し、訓読文を作成したうえで、それをテキスト・データベース化して、勤務先のウェブサイトにおいて公開した。
|