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日本列島の砂浜に所在する海岸林は、その大半が近世に成立し、防災をはじめ多様な公益的機能を担い人と共生してきた、歴史的存在である。そうした認識のもとに植林の経過と生育管理、及び利用の推移を明らかにする史料を検討し、現地で調査を行ってきたが、最終年度は①仙台湾岸地域で植栽場所の地形・地盤を確認する調査を継続し、地元の暮らしを知る史料の分析を行ったほか、②福井県坂井市・敦賀市で現地調査を行い、③全国の市町村史・史料集から利用を知る史料を収集した。とくに②③の成果として次の2点を挙げる。
第一に、植林開始の背景と条件の多様性を確認することができた。仙台藩・磐城平藩・相馬藩などでは、藩による新田開発の推進を背景に潮害防備のための植林が政策的に始まる。日本海側の砂防林については、内陸の山林で薪炭生産を目的に伐採が進行し大量の土砂が河口に運ばれたことを重視する説明がある。福井藩の三里浜は地形・地盤の条件の違いに加えて港町、製塩や畑作の村であるという違いが、植林の進行とその後の住民の関りに影響を与えていた。一方、支配が入り組む房総地域や、駿河・遠江・三河などで植林は、領主的対応に加えて、地域間の情報共有や集落独自の判断などを跡付けることができる。
第二に、松葉の採取と利用に関して従来の見解を見直す史料を蓄積した。仙台藩では海岸林の日常的な管理と引き換えに松葉の採取を地元に半ば権利化していたが、小浜藩では藩が管理の主体であり、松葉を採取する村に対して小物成を賦課している。この違いは地元が植林に関与したか否かに起因すると考えられる。また松葉は採取した家で燃料として消費されるだけでなく、沿岸地域で広く商品化された可能性を見通すことができる。
①については大学の紀要に調査報告を掲載した。また海岸林の歴史に関する文献リスト、記録写真や発表用のパワーポイントを収載した報告書を作成した。
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