研究課題/領域番号 |
21K00877
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
高岡 真美 神奈川大学, 理学部, 非常勤講師 (90770735)
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研究分担者 |
西本 右子 神奈川大学, 理学部, 教授 (70241114)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 天然砥石 / 蛍光X線分析 / 鳴滝砥 |
研究実績の概要 |
本年度予定していた京都天然砥石産地の調査や、岐阜県埋蔵文化財センター出土重竹遺跡調査については、新型コロナ感染症対策の観点から行うことを差し控えた。 そこで研究代表者が集めた文献資料等から、本研究の刀剣研磨「鳴滝narutaki」砥の歴史について再確認した。本研究で特に「鳴滝narutaki」砥とする理由としてはⅠ型地層帯の風化したものが鳴滝砥である。その範囲は、京都府梅ケ畑から丹波山地に及ぶ。京都産天然砥石の採掘がわかる文献には神護寺所蔵の神護寺絵図があり、寺の四隅を指標した絵図中に「砥取峯」と付記されていることを砥石採掘のはじまりと考えられている。 京都産天然砥石の採掘・販売を現在行っているさゞれ銘砥(株)中岡氏によればこの絵図に示された、平岡八幡宮や幹線道路の位置は現在とほぼ変わらないという。そこで本研究では研究目的の範囲を刀剣研磨の仕上げ砥いわゆる鳴滝砥、内曇砥の産出する神護寺絵図に描かれた山々に絞り、中岡氏の協力を得て絵図に示された「砥取峯」付近の山の砥石を購入し、調査範囲とすることとした。 購入した砥石や、研究代表者所有の砥石31点から蛍光X線分析調査ができる試料を作成し、Rigaku XRF-EDS NEX DEにより研究分担者が分析調査を進めている。 また研究代表者所有の短刀「丹波守吉道」(江戸時代)を刀剣研磨師藤代氏が研磨した。片面を差込み研ぎ(現代研ぎ)反対面を仕上げ研ぎの前段階までと表・裏面で研磨方法を違えて研磨した。すると差し込み研ぎでは「地金は黒く刃は白く」、地金の働きや刃文の美しさが映える研磨となったが、艶砥による仕上げ研ぎのない面は地金の黒さのない、白色の刀身に仕上がった。艶砥での研磨が日本文化の華である日本刀を造り出す結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現地等の調査はできなかったが、文献による刀剣研磨「鳴滝narutaki」砥の歴史について研究目的を整理できたこと。 市販の京都産天然砥石について分析試料を準備した。試料の大きさとしては艶砥を作る前段階の砥石薄片、約2ミリ厚さの試料も準備し、厚さによる蛍光X線分析調査の結果に違いがないか比較できるようにした。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度で文献調査による「研究目的」を整理した結果を刀剣研磨「鳴滝narutaki」砥の歴史(仮題)冊子を発行することとした。刀剣研磨の仕上げに使う艶砥を作るハイテクセンサーを指に持つ刀剣研磨師が日本文化の華である日本刀を生み出す。昨今の世界情勢をみても刀剣が戦闘用武器ではない。日本では戦国時代一国に代わる恩賞として利用された日本刀は艶砥によって研磨された刀剣を研磨師が磨き上げた、つまり日本刀には一国を争う戦さを収める力を生み出す芸術品としての価値があり、その価値は世界からも評価されている。 「地金は黒く刃は白く」艶砥による研磨のはじまりや、稲荷山古墳出土鉄剣の復元を行った成果を刀剣研磨師藤代興里氏、「鳴滝砥石」の成り立ちを現在採掘を続けている丹波山地の鳴滝砥を含め、京都教育大学名誉教授井本伸廣氏、刀剣伝書にみる刀身の色について近藤好和氏など専門家に稿を賜り「刀剣研磨「鳴滝narutaki」砥の歴史を整理し、1,000部発行する。本誌の発行は当初予定していなかったものであり、現状より富山県や青森県の遺跡調査の旅費等を使用したい。 令和4年度は、岐阜県埋蔵文化財センター所有の刀剣鍛冶遺跡跡と言われる重竹遺跡出土天然砥石を借用し、非破壊による蛍光X線分析調査を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
京都産天然砥石調査や、埋蔵文化財センター等での砥石借用のための出張旅費を使うことができなかったため。令和4年度に行う予定である。
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