研究課題/領域番号 |
21K00880
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研究機関 | 佛教大学 |
研究代表者 |
佐古 愛己 佛教大学, 歴史学部, 教授 (70425023)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 告身 / 位記 / 叙位 / 除目 / 後三条天皇 |
研究実績の概要 |
本研究は広範かつ長期的視野から人事昇進制度を体系的に把握するために、人事諸制度と社会編成・構成とを積極的に関係づける視座から、叙位除目制度の特徴、運用実態や人事に関わる慣行、さらに制度下にある人々の心性を解明することを目指している。また、日本の人事諸制度を東アジアの中で位置づけその特質解明を目指すため、唐・宋および律令を継受した高麗との比較検討を行うことを目標としている。 今年度は昨年度に引き続き、日本における古代中世移行期の政治・社会構造と人事制度との関係性を考察すべく、摂関・院政期の叙位・除目に関する研究、とりわけ後三条朝・白河朝を中心とする時期の昇進制度について調査、検討を加えた。また、唐・宋、高麗・朝鮮の告身や人事に関する文献や資料収集を行い、先行研究の整理と課題の洗い出しを進めているところである。 本年度は(1)唐・宋を中心とする中国の告身や人事制度に関する研究・史料としては、①瀧川政次郎「唐の告身と王朝の位記 (一)~(三)」(『社会経済史学』2 (4)~(6)、1932)、②宮崎一定『九品官人法』・『科挙』(『宮崎市定全集』第6・15巻、岩波書店。初出は1956・1946)、③大庭脩『唐告身と日本古代位階制』(皇學館大学出版部、2003)、④小島浩之「南宋告身二種管見 併論:インターネット情報と歴史学研究」(『論集:中国学と情報化』2016)を、(2)高麗を中心とする告身や人事制度に関する研究として、①川西裕也『朝鮮中近世の公文書と国家 変革期の任命文書をめぐって』(九州大学出版会、2014)を、(3)日本の告身に関する研究として、①大庭脩「唐元和元年高階真人遠成告身について」(高橋先生還暦記念『東洋学論集』、1967)、②丸山裕美子「円珍の位記・智証大師諡号勅書と唐の告身」(『国立歴史民俗博物館研究報告』224、 2021)を収集、読解、整理している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
諸事情により新型コロナ禍のなかでの遠方への外出が困難となり、史料調査が限定的となったこと、および研究時間の確保が難しく調査・研究にやや遅れが生じているため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に引き続き、東アジアのなかで日本の人事諸制度・関連文書を俯瞰し特質解明を目指すべく、律令制的枠組みが希薄化する9世紀以降から鎌倉期までの叙位・除目制度と貴族社会・官僚制度のあり方を検討するとともに、唐や律令を継受した高麗との比較という視点も意識して考察するため、当該地域の人事制度や告身に関する先行研究を収集、読解して、課題の整理を早急に進めたい。特に、告身と位記など人事関連の文書様式、発給手続き、人事制度の比較という視点から、研究を進めていきたい。 日本の人事制度の研究に関しては、①年官や公卿給などを中心に取り上げ、平安時代の除目の特色について検討する。②摂関・院政期の天皇・上皇・摂関の叙位・除目への関与の方法に関して、儀式書や古記録の記述をもとに検討を進める。③中世の位記の調進に関する検討を行う。④唐・高麗の人事制度や告身に関する研究に関しては、前年度から引き続き、先行研究の整理と課題の洗い出しを進める予定である。 また、未刊行史料の閲覧・複写(紙焼の購入等)を行うため、史料調査も積極的に進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述の理由により、史料調査が十分に行えなかったこと、および研究時間の確保が難しく調査・研究に若干の遅れが生じたことにより、次年度使用額が生じた。 今後の主な使用計画としては、叙位・除目関連の未刊行史料(紙焼き)や唐・宋・高麗・朝鮮などの告身関係史料(『告身 朝鮮時代の任命文書を読む』など)の購入と、史料調査(東京・千葉:宮内庁書陵部、東京大学史料編纂所、国文学研究資料館、国立歴史民俗博物館など)実施費用として使用する予定である。
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