R5年度では、これまでの調査結果のもとに、簡帛・封泥・文献等の資料と照合しながら総合的な歴史学的考古学的研究を行い、岩手県立博物館蔵古印の固有の価値を歴史学的に解明し、最新の中国古代文字学知識をもって岩手県立博物館「資料基本カード」やほかの著録に未解読または誤解読の印文を解読した。また岩手県立博物館所蔵太田孝太郎旧蔵の金石小品の帯鈎を調査して研究を行った。なお、実物は現存しないが、『夢庵蔵陶』と『夢庵蔵せん』の文献資料を調査して研究を進めた。ほかに本科研の延長線として、大和文華館所蔵中国古印及び和泉市久保惣記念美術館所蔵中国古印の調査研究を行った。本研究のまとめとして、『太田夢庵中国金石収蔵與蔵品著録』書籍を出版した。これは岩手県立博物館蔵太田夢庵旧蔵中国古印・夢庵旧蔵陶文・夢庵旧蔵せん文及びほか金石小品の調査研究を集大成したものである。研究期間全体を通じて実施した研究成果として、著書三冊・研究論文10本余りを刊行した。計画通りに岩手県立博物館蔵中国古印を徹底的に調査研究してすべて古印資料の印面・印影・印紐を刊行し、関連研究も行われた。 研究論文:①劉海宇「秦漢三国時期塩業官印輯考」、『塩業史研究』2023年第2期、2023年4月、3-11頁、査読有。②劉海宇「漢代斗検封考」、『東方考古』第21集、2023年7月、343-353頁、査読有。③劉海宇「大和文華館所蔵の中国古印について」、『大和文華館紀要』第143号、2023年9月、19-23頁、査読有。④劉海宇「日本和泉市久保惣記念美術館蔵秦漢印選釈」、『故宮博物院院刊』2023年第12期、査読有。 著作:劉海宇・玉澤友基『太田夢庵中国金石収蔵與蔵品著録』、上海書画出版社、2024年3月27日。
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