研究課題/領域番号 |
21K00886
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
新宮 学 山形大学, 人文社会科学部, 名誉教授 (30162481)
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研究分担者 |
大野 晃嗣 東北大学, 文学研究科, 教授 (50396412)
佐藤 琴 山形大学, 学士課程基盤教育機構, 准教授 (20620941)
山川 曉 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館, 学芸部工芸室, 室長 (70250016)
渡辺 健哉 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 教授 (60419984)
水盛 涼一 多摩大学, 経営情報学部, 准教授 (20645816)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 壬辰戦争 / 明朝 / 上杉景勝 / 日本国王冊封 / 豊臣秀吉 / 冠服 / 犀角帯 / 保存修理 |
研究実績の概要 |
本科研の初年目の2021年度は、7月には米沢市の上杉神社・伝国の杜で、1月には大阪市立大学で、研究代表者・分担者5名と研究協力者の参加のもとに資料調査と研究会を開催できた。前者では対面で、後者は対面とオンラインを併用して実施した。 米沢では、上杉神社所蔵の景勝受贈の明朝箚付と冠服の重要文化財分割指定と明冠服類(紗帽・犀角帯・靴3点)の保存修理後初めての特別展示を閲覧調査し、当該資料についての認識を共有できたのは、今後の共同研究を進めるにあたり、好スタートとなった。研究会では、研究協力者で、特別展示を企画担当した上杉神社稽照殿学芸課長角屋由美子氏が「重要文化財の明冠服類(烏紗帽・犀角帶・靴3点)の保存修復について」と題して講演、分担研究者の佐藤琴が「上杉神社所蔵の明朝冠服の補子について―飛魚か斗牛か」の研究報告を行った。 大阪では、今回文化庁等の支援を得て修復された紗帽・犀角帯・靴の修復作業を担当した京都の松鶴堂修理技術部染織担当課長の城山好美氏が「重要文化財の明冠服類の修理について」と題して講演、研究代表者の新宮学が「上杉神社所蔵景勝受贈の犀角帯の稀少価値について」の報告を行った。とりわけ国宝や重要文化財に指定された資料は、熟覧調査が制限されるため、実際に修理を担当した修理技術者者からの修理の実態についての詳細な報告は、とても有益なものとなった。また新宮の報告では、景勝の犀角帯とされた腰帯は、金具にすべて犀角片を嵌め込んでいることから、秀吉の頒賜品目録に見える「金箱犀角帯」と同様な稀少なものと判断されることを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
科研の申請の際に当初計画していた国内での資料調査は、この間の新型コロナウィルス感染蔓延の継続により、十分に行えない状況で、当面はインターネットや機関リポジトリ上で情報収集できる資料・学術論文をもとに研究することを余儀なくされているため、研究の遅れが生じている。とくに、この間大学附属図書館が、学外者の利用閲覧を厳しく制限していることの影響が大きい。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画では、2022年度に海外調査を予定いていたが、中国の新型コロナウィルスが収まっていないため、当面は比較的安全な国内での資料調査と文物熟覧を予定している。 宮内庁書陵部所蔵の豊臣秀吉宛勅諭の熟覧調査の申請を計画している。また2019年10月に大阪城天守閣の特別展「豊臣外交」で公開された兵庫県の龍野神社奉賛会所蔵の明朝官服の例に示されるように、日本国内には壬辰戦争期に明朝より下賜された冠服類が保存されている可能性がある。国内の中近世の文物資料を収蔵する博物館や神社宝物館に対して、書面による調査照会を計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染未終息のために海外や国内の資料調査が十分に行えなかった。国内は改善傾向にあるので、今年度は国内調査を中心に進める予定である。
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