研究実績の概要 |
2021年度(2021年4月1日~2022年3月31日)は、本「トルコにおける伝統的美意識の変遷と「辺境化」の過程についての文学(史)的基礎研究」の初年度に当たり、昨年度まで本実績報告者が研究代表者を務めていた科学研究費「オスマン帝国における文化的選良層の社会生活と美意識の変遷についての社会史研究」(若手研究B、2017-2020)の研究成果も加味しつつ、イスタンブール都市史を扱った単著『物語イスタンブールの歴史:「世界帝都」の1600年』中公新書, 2021、および報告者の行った国内での研究発表に基づく論文「記憶の沈黙:オルハン・パムク『静かな家』におけるセラハッティンの『百科事典』をめぐって」『れにくさ:現代文芸論研究室論集』12巻, 2022, pp. 8-18が公刊された。単著は本研究におけるメインフィールドであるイスタンブールの歴史を総括し、本研究の基礎となる業績に数えられる。また前記の論文は近代トルコにおける俗流唯物主義を扱い、同地域の美意識の西欧化における思想的背景を扱い、本研究に所縁に深い内容となっている。また、このほかに国外で行った講演会に基づきつつ、日本におけるトルコ文学研究状況と翻訳を扱った論文Ryo Miyashita, “Japonya’da Turk Edebiyati Cevirisi ve Arastirmalari, Turkiye’de Japonya Arastirmalari, Vol. 4, 2021, pp. 356-365が公刊された、こちらは将来的な本研究の学際的展開にとって重要な布石となる成果と言える。
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