研究課題/領域番号 |
21K00891
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
村井 恭子 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (50569291)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 吐谷渾 / 東洋史 / 多言語 / チベット / ユーラシア東部 |
研究実績の概要 |
本研究は、古代チベット語・テュルク語など非漢語史料や敦煌文献など特殊史料を扱う研究協力者と協同し、吐谷渾に関連する史料を収集して学界に提供するとともに、それらを用いて4~11世紀における吐谷渾史の全体像を再構築することを目的とするものである。 2021年度においては、まず研究代表者および研究協力者4名とZoomによる遠隔会議を複数回開催し、メンバーそれぞれの専門領域における吐谷渾関連の史料にどのようなものがあるのかをリストアップしてもらい、重要性の高い史料から検討していくことにした。さらに、このメンバーでおおむね月に1回のペースで、従来検討不十分であった『旧唐書』吐谷渾伝の訳注作業を進めている。本訳注作業は、中国史のみならず、チベット史関連の二次文献にも注意するかたちで行っている。 そのほか、中国学界の動向や関連遺跡について情報を収集した。近年中国本土では、吐谷渾に関して、青海省都蘭熱水墓群の2018血渭一号墓・青海湖近辺の伏俟城遺跡・甘粛省武威吐谷渾王陵墓群において、新出墓誌を含む新たな考古遺物の発見や遺跡・考古遺物の調査結果の公表が相次ぎ、関連学会では大きな盛り上がりを見せている。この状況について、親交のある中国人研究者に助力を仰ぎ、最新情報を収集・整理して日本アルタイ学会主催の学会(第57回野尻湖クリルタイ)において各遺跡・遺物の具体的状況および中国の調査状況について報告・紹介を行った。なかでも2019年に甘粛省武威の吐谷渾王陵から発見された吐谷渾王族慕容智墓誌(則天武后期)の全文が公開されたこと、その後さらに近辺から新たな親族の墓陵が発見されその墓誌石が得られたことは、吐谷渾史にさらなる重要な史料が追加されたという点で注目に値する。後者についてはまだ全文未公開の状況であるが、慕容智墓誌とともに本研究で検討を加えていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
各言語の吐谷渾関連史料について、おおむねピックアップはしたが、目録を作成するまでにはいたらなかった。またピックアップした史料についてもさらなる検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も研究会を開催し、各言語の吐谷渾関連史料の目録の作成を進めていく。この目録作成ののち、さらにテキストの校訂作業と訳注を進めていく。また中国における関連学界の動向に注意を払い、新たな情報の収集に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費については、新型コロナウイルス流行に鑑み、研究協力者との遠隔会議のためのヘッドセット一式を購入予定であったが、全員がすでに所有しており、問題無く使用できたため購入の必要がなかった。またノートPC1台とメンバー全員分のUSBメモリ―を購入する予定であったが、目録作成の段階にはいたらなかったので、次年度に作業状況をみて購入する予定である。関連図書については、現在中国で本科研に密接に関わる史料が陸続と発見されているが、まだ本格的な報告書や史料集は公刊されていないため0となっている。次年度は近年発見された史料・考古遺物に関する図書・資料集を中心に購入していく。また研究会で必要となった資料の複写費用にも充てていく。
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備考 |
黎虎著、村井恭子訳「(抄訳)中国古代史の時代区分および社会性質 ―兼ねて中国伝統社会の主要矛盾問題を論ず―」『大阪市立大学東洋史論叢』21号、2021年、3-41. 黎虎著、村井恭子訳「和親女性の常駐使節としての機能 ―漢代を中心に―」『神戸大学史学年報』36号、2021年、1-24. 村井恭子「唐代契丹の反乱と河北海運使の成立」、古畑徹編『高句麗・渤海史の射程』汲古書院、2022年、125-149.
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