研究課題/領域番号 |
21K00898
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研究機関 | 名桜大学 |
研究代表者 |
清水 美里 名桜大学, 国際学部, 准教授 (70785550)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 水資源 / 技術移転 / 環境史 / 灌漑用水 / 植民地 / 台湾 / 東アジア / 帝国日本 |
研究実績の概要 |
本研究は5つの小テーマがあり、その小テーマごとに研究スケジュールを組んでいる。5つの小テーマとは①灌漑用水システムの変遷、②灌漑用水の工業用水への転用、③水力発電システムの変遷、④水道システムの変遷、⑤総合的利水システムの変遷である。 2021年度はコロナ禍の限られた条件のなかで可能な限り①の研究を進めた。2022年度は①を継続しつつ、②③にも着手した。これまで収集した資料、特に水利技術者を読者とした専門雑誌の分析を進めた。2022年度は研究拠点が沖縄県名桜大学に移動し、本研究においては沖縄との比較の視点が得られる、台湾へのアクセスが容易になるなど本研究にとってより好条件の研究環境を得た。だが、一方で台湾渡航が緩和した2022年夏季は沖縄県内の感染状況が急激に悪化し、研究拠点において県外への渡航に対する警戒感が高まり、コロナ禍の影響を引き続き受けた。よって、2022年度もオンライン資料や以前に収集した資料の再検討が中心となった。ただし、複数回の関東における国内調査で戦後台湾と日本の経済交流に関する資料を入手することが出来た。 2022年10月21日にはオンラインで中国語による国際ワークショップ「日本帝国殖民環境史研究工作坊」(日本帝国植民地環境史研究ワークショップ)に参加し、本研究の成果を「技術的去日本化:以水資源為例」(技術の脱日本化:水資源を事例に)として口頭発表した。司会の候嘉星氏(中興大学)および他の4報告者は全て台湾人研究者であり、日本植民地期および戦後の台湾における近代技術の導入、環境問題、技術移転とそれらに関連する当時の台湾人の認識に関して有意義な意見交換ができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2022年度は昨年度までの新型コロナウィルス感染対策にともなう台湾渡航への制限が緩和したものの、申請者の研究拠点が東京都の立教大学から沖縄県の名桜大学に移動し、同年夏季は沖縄県内の感染状況が急激に悪化していた。これにより、国内外を問わず県外への渡航に対しては、研究拠点の業務に支障を来す恐れが生じ、渡航に慎重にならざるを得なかった。昨年度の研究の遅れはある程度想定内であったが、今年度も海外調査の困難が継続したことは想定外であり、研究に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況に記した小テーマのうち①~③については既に研究に着手してきたものの、国内外の資料調査が制限されていたため、いまだ成果を論文としてまとめるには至っていない。昨年末より台湾渡航への制限が緩和されたため、今後は台湾における資料調査、フィールドワークを積極的に行い、新たな資料を入手し、分析を深めていく。 2023年度は引き続き①~③について並行的して資料収集につとめ、分析を行う。③は水力発電に関するテーマであるが、戦前の台湾の水力発電所建設においては、日本人技術者がアメリカ企業に技術的な協力を依頼している。さらに、アメリカは戦後台湾でも発電所建設に際し技術提供を行っていた。よって、中文のみならず英文資料を国内外で収集し、台湾における日本やアメリカからの技術移転の交錯について分析を深めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度の繰越額が16,019円であり、今年度の繰越額が10,058円であるため、前年度より減額している。よって、令和4年度分は計画的に消化したと言える。また、令和5年度は旅費などの使用が増えることが考えられるため、旅費に充当する予定である。
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備考 |
書評:堀内義隆著『緑の工業化ー台湾経済の歴史的起源ー』新しい台湾経済像を描く(日本台湾学会報(24) pp. 195-201. 2022年6月) 書評:三尾裕子編『台湾における〈日本〉認識 : 宗主国位相の発現・転回・再検証』 (日本植民地研究 (34) pp. 59-64 2022年6月)
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