研究課題/領域番号 |
21K00902
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
中村 篤志 山形大学, 人文社会科学部, 教授 (60372330)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | モンゴル史 / 清朝 / 駅站 / 交通路 / 行政文書 |
研究実績の概要 |
清朝治下の漠北モンゴルには、文書行政を支える駅站路や、漢人商人らが往来した隊商路などが縦横に走っていた。本研究では、これら交通路の地理情報を整理し、往来した人や物を数的に把握すると同時に、モンゴル国ドンドゴビ県を事例に、このような交通や物流が地域社会に与えた影響を、近現代までを視野に考察する。 研究の初年度となる2021年度は、新型コロナウイルス感染症の影響もあり海外での調査・研究はほとんどできなかったが、このような事態はある程度事前に想定していたので、今年度は既収集史料の整理やこれまでの研究の総括を中心に行った。 主な成果として、漠北駅站の幹線であるアルタイ軍台のうち、東部のハラチン駅站について、現時点での研究成果や今後の課題を展望する論文を発表することができた。論文では、これまでの現地調査、聞き取り調査で得られたデータを整理し、ハラチン駅站の起源から現在に至るまでの歴史、ドンドゴビ県に存在するハラチン駅站の遺構、そして地域に残る駅站の記憶についてまとめた。 とくに、清代に漠南から移住させられ駅站維持に当たっていた「ハラチン集団」が、清朝崩壊後も漠北に残り、現在に至るまで自分たちのアイデンティティを維持して存在していること、清代に駅站に併置された寺院がその集団の記憶の伝達や結集に重要な役割を果たしていることなどを明らかにした。今後はこのハラチン駅站・ハラチン集団を軸に文献調査や現地調査を行い、周辺の交通路へと調査を広げていくこととする。調査の方向性が見えてきたことは研究初年度としては十分な成果といえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症の影響で今年度は現地調査・史料調査を行うことができなかったが、このような事態は申請段階である程度想定できたため、今年度は既収集史料の整理や今までの研究の総括を行った。おおむね計画どおりに行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き研究成果の公開を進めつつ、海外調査や現地調査についても可能な限り行いたい。いずれにせよ、現地研究者や現地協力者ともよく連携しながら、研究の効率化を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響で現地調査・史料調査を行うことができなかったため。次年度での資料収集や調査などに使用する予定である。
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