研究課題/領域番号 |
21K00903
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
河原 弥生 東京大学, 附属図書館, 准教授 (90533951)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 中央アジア / 巡礼 / 旅行記 / ペルシア語 / ロシア帝国 |
研究実績の概要 |
本研究は、19世紀初頭のイスラーム知識人であるムハンマド・ハキーム・ハーンが独自の視点で編纂した普遍史『選史Muntakhab al-tawarikh』における歴史叙述と旅行記を分析し、そこに表出する自己認識や歴史観から、当時の中央アジア社会を後の時代や周辺世界と相対化して描き出すことを目的としている。 2021年度は、史料分析に関しては、歴史叙述のうち普遍史部分の典拠を特定するための研究を進めた。これまでの予備研究により、冒頭を含め大半の部分が14世紀半ばに完成した『学問の貴さNafa’is al-funun fi ‘arayis al-‘uyun』からの引用であることがわかっているが、それ以外の歴史書について検討を行った。その結果、かなりの部分は複数の歴史書と照合することができたが、ティムール朝期に関しては課題が残ることとなった。 現地調査に関しては、イランで旅行記部分に関する調査を行う計画であったが、新型コロナウイルス流行が収束せず、海外渡航が制限されていたため、予定通りに実施することができなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
史料分析は概ね予定通り進めることができたが、現地調査に関しては、イランで旅行記部分に関する調査を行う計画であり、海外渡航が制限されていたため、予定通りに実施することができなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
海外渡航が可能な状況であれば、ウズベキスタンまたはタジキスタンにおいて、史料調査および聞き取り調査を行う。以前の現地調査により、ウズベキスタンのコーカンドにおいて、『選史』の著者一族の傍系の人物の系譜書をその子孫が所蔵していることを確認し、予備調査を行っているので、それを手がかりに調査を継続する。 渡航が困難な状況が続けば、大幅な計画の見直しを検討する。本研究では、『選史』の内容を史料分析と現地調査の両方によって検討する計画であったが、史料分析を中心とした計画に変更し、『選史』のペルシア語からチャガタイ語への翻訳について分析を行う。現存するチャガタイ語訳は、予備調査により少なくとも二種あることがわかっており、入手済みの一写本の複写に基づいて分析を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
現地調査に関して、イランで旅行記部分に関する調査を行う計画であったが、海外渡航が制限されていたため、予定通りに実施することができなかった。
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