研究課題/領域番号 |
21K00907
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
伊藤 隆郎 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (60464260)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | マシュリク / 気候変動 / 自然災害 / 疫病 / 飢饉 / 物価 / 暴動 |
研究実績の概要 |
本研究は、中世後期(西暦13世紀半ばから16世紀初頭)のマシュリク(本研究ではエジプトと歴史的シリア、およびこの時期に両地域と関係の深いヒジャーズを指す)における異常気象や風水害、旱魃、蝗害、疫病、地震などの自然災害、またそれらが影響したと考えられる物価の動向、飢饉、暴動などに関する記録を同時代のアラビア語史書から抽出し整理する。そして、どのような気候変動と自然災害が生じ、それらが政治、経済、社会にどのように影響したのか、また逆に人々がそれらにどのように対応したのかを明らかにするものである。具体的な研究項目は、次の通りである。(1)中世後期マシュリクにおける異常気象に関する記録を、同時代のアラビア語史書から抽出して整理する。そして、中世温暖期から小氷期への「大変転期」とされるこの時期に、マシュリクでどのような気候変動が起きていたのかを明らかにする。(2)同時期のマシュリクにおける風水害、旱魃、蝗害、疫病、地震などの自然災害に関する記録を同時代のアラビア語史書から抽出して整理し、(1)気候変動との関連を明らかにする。(3)同時期のマシュリクにおける物価動向、飢饉、暴動などに関する記録を同時代のアラビア語史書から抽出して整理し、気候変動と自然災害が政治、経済、社会にどのように影響し、逆に人々はそれらにどのように対応したかを明らかにする。 上記研究項目のうち(1)については、1480年から1501年までの短い期間ではあるが、イブン・タウク(1509年没)の『日記』にダマスカスの天候が詳しく記録されていることがわかったので、それらを整理中である。(2)については、1348-9年に猛威を振るった黒死病に関する歴史書の記述を検討した論文を書き、投稿した(印刷中)。(3)については、先行研究から情報を収集している段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
イスタンブル(トルコ)とカイロ(エジプト)の図書館・文書館で手稿本(写本)と未公刊文書の調査をする必要があるが、コロナ禍のために延期せざるを得なかったため。
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今後の研究の推進方策 |
上記研究項目(1)については、イブン・タウク『日記』のデータ整理を完了し、論文にまとめる予定である。また、13世紀半ばから14世紀半ばまでの時期における異常気象に関する記録を同時代史料から抽出し、整理する。(2)についても、13世紀半ばから14世紀半ばまでの時期における自然災害に関する記録を同時代史料から抽出して整理し、(3)についても同様に、13世紀半ばから14世紀半ばまでの時期における物価動向、飢饉、暴動に記録を同時代史料から抽出、整理する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、外国での調査を延期することになり、次年度使用額が生じた。今年夏にイスタンブルに渡航し、調査を行う予定である。
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