研究実績の概要 |
本研究は、中国古代の家計経済に関して、国家の収支や諸物価とからめながら、数量史的に議論をするものである。本年度は後漢三国時代の長沙地区における個々の戸の具体的検討をおこない、その成果として論文「三国時代における孫呉の郷里社会――荊州長沙郡臨湘侯国の小武陵郷吉陽里と南郷宜陽里を例に――」(『三国志研究』第17号、2022年9月,37-61頁)を執筆した。これらの諸成果によって、個々の戸がおおむねどれほどの家族構成になっており、どの程度の田畑を保有し、毎年どれほどの収支を営んでいたのかが判明した。 また上記研究成果の付随的な成果として、論文「魏晋南北朝時代の仏僧と商人」(『東方学』第144輯、2022年7月,38-56頁)を刊行した。これは、後漢以後の経済に関して、商人と仏僧の両者が影響を与えていたことを闡明したものである。そのさらに付随的な研究成果として、論文「魏晋南北朝時代における仏教と剃髪」(『東洋学報』第104巻第2号、2022年9月,101-130頁)を刊行した。これは、中国への仏教伝来にともない、髪型をめぐっていかなる文化衝突が生じたのかを論じたものである。 それはともかく、以上によって、本研究課題最大の論点となる、個々の戸の家計収支のケーススタディをすることができた。
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