中国古代史といえば、重要な人物や事件に焦点をあてるものが多い。またマルクス主義史学の影響を受けた戦後歴史学では税制や土地制度の研究も多い。だが一般民の日常生活や家計収支に関する研究は手薄であった。幸いに近年、簡牘史料が激増し、上記諸問題に接近する手がかりが得られた。これによって中国古代の一般民の生活ぶりがリアルに判明するようになった。これが本課題の学術的意義である。またこれを日常史研究全般に落とし込み、拙著『古代中国の24時間』(中央公論新社、2021年)を刊行できた。これは平易な新書であり、たいへんな好感をもって一般大衆に受容されたものと理解している。以上が本研究の社会的意義である。
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