本年度は、これまでの研究成果を踏まえて具体的な分析作業に従事したが、本研究課題を直接の主題とする雑誌論文などの形で公表するまでには至らなかったが、アジア経済史の概説書(古田和子・太田淳(編)『アジア経済史』(上)、岩波書店)を分担執筆し、そこにこれまでの研究の一部が反映されている。また、『岩波講座 世界歴史』の新シリーズの一巻を取り上げた書評も公刊した。 3年間の研究期間の前半は新型コロナウイルスの蔓延のために困難に直面したほか、研究代表者のマネージメントに不手際があり、共同研究があまり上手く進まなかった。具体的には、昭和後期~平成にかけてのごく近年の教科書にアクセスすることが困難だと判明したことが挙げられる。また、最終年度途中で研究分担者が民間企業に就職することになった。大学にも籍が残せる業種であったため、分担者としての籍は年度末まで残ったが、実質的に研究活動の遂行が困難となったため、これ以上の共同研究の遂行は諦めざるを得なかった。 そのような中でも、R4年度に行った東京の教科書図書館での調査によってかなり網羅的に資料の収集ができた。 研究期間全体を通じての最終的な研究成果は、論文4本、書評・学界展望3本、学会発表5回(うち、国際学会3回)、翻訳書2冊(上下巻)、分担執筆した書籍2冊、ワーキングペーパー1本となる。このうち、翻訳書は第39回大平正芳記念賞特別賞を受賞した(2023年2月)。書評・学界展望が3本あり、また学会発表も学界展望的性格のものが多く、本課題の性格を反映している。
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