研究課題/領域番号 |
21K00920
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
岩井 淳 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (70201944)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ピューリタン革命 / 名誉革命 / アメリカ独立革命 / 大西洋世界 / 複合国家 / ブリテン帝国 / 高大連携 / 歴史教育 |
研究実績の概要 |
本研究は、近世のブリテン帝国史に、複合国家論や英米交流史、英米宗教史の視点を取り入れ、ピューリタン革命や名誉革命の情報が、アメリカ植民地に伝播し、17世紀の二つの革命が18世紀の独立革命へと連鎖したことを解明するものである。 そのため、2021年度には、オンライン史料集のEarly American Imprints を使用しながら、18世紀前半の北米の植民地が17世紀のピューリタン革命と名誉革命を、どのように受容したかを、1750年1月30日のチャールズ一世処刑百周年記念日になされた説教史料を中心に分析・考察した。史料の筆者は、ボストンで牧師を務めるジョナサン・メイヒューで、彼は本国のピューリタン革命や名誉革命に言及し、とくにピューリタン革命の過程を詳細にたどり、国王処刑が認められない反逆ではなく、専制政治に対する正当な抵抗であったことを説得的に論じた。彼は、人々の自然権を守るために君主に対してなされる抵抗は、正しい原理に基づいた行動であることを主張した。この発想は、宗教思想に立脚した同時期の説教史料と相まって、独立革命の要因として位置づけられるだろう。 本年度の研究成果は、2021年12月4日の初期アメリカ研究学会第86回例会において「「三つのブリテン革命」を考える―ピューリタン革命・名誉革命・独立革命」というタイトルでオンライン方式によって発表された。その要旨は、『初期アメリカ研究学会ニューズレター』90号(2022年2月17日)に収録されている。さらに論旨を補強して、2022年3月5日のイギリス革命史研究会例会において「三つのブリテン革命再考―独立革命期におけるピューリタン革命・名誉革命の受容」というタイトルの報告が神奈川大学みなとみらいキャンパスにて発表された。このテーマを充実させ、今後も17世紀の二つの革命が18世紀の独立革命に繋がる過程を検討したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述したように、大西洋世界を舞台にして、近世のブリテン諸島とアメリカ植民地が密接な関係を維持しながら、ピューリタン革命や名誉革命の情報が、アメリカに伝播し、17世紀の二つの革命が18世紀の独立革命へと連鎖したことの一端は解明された。しかしながら、2020年度から始まったコロナ禍は21年度も継続し、当初予定していた連合王国や合衆国での史料調査を実施することができなかった。この点は、本研究を遂行するにあたって大きな制限となった。のみならず、国内での史料調査に関しても、首都圏や関西圏への移動が制約されたため、各地の大学図書館や研究施設の利用が十分にできなかった。 だが、2021年度になると、予定していた学会や研究会がオンライン形式で再開されるようになり、各地の図書館や研究施設の利用も、徐々に可能となった。そのため、前記の2021年12月4日の初期アメリカ研究学会第86回例会での発表や、2022年3月5日のイギリス革命史研究会例会での発表が実現した。コロナ禍にあってもオンライン史料集を活用して資料収集を続けることができ、その成果を学会や研究会で発表したので、本研究の一年目は「おおむね順調に進展している」と位置づけられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、大西洋世界を舞台にして、近世のブリテン諸島とアメリカ植民地が密接な関係を維持しながら、ピューリタン革命や名誉革命の情報が、アメリカに伝播し、17世紀の二つの革命が18世紀の独立革命へと連鎖したことを、一次史料を用いて検討したい。とくに、2022年度は、Early English Booksに収められた独立派や長老派、バプティスト派、クェーカー派に関する記述史料を分析すると同時に、渡英して、帝国史関係の一次史料として、Bodleian LibraryとGuild Hall LibraryとEssex Instituteに所蔵される移民関係の史資料を調査する予定である。ただ、2022年度も渡航制限が続くようであれば、国内の東京大学、とくにアメリカ太平洋地域研究センター、慶應義塾大学、京都大学を対象とした史資料調査に重心を移し軌道修正するなど、臨機応変に対応する予定である。 同時に、アメリカ独立革命が、ピューリタン革命や名誉革命から継承した諸点を明らかにするため、18世紀の帝国史や宗教史に関する史料分析に力を入れ、学会報告や個別論文の執筆を進める。そのため、America’s Historical Imprints に収められた独立革命関係の史料収集と分析を進める。また渡米して、帝国史関係の一次史料として、American Antiquarian SocietyやBoston Public LibraryやMassachusetts Historical Societyに所蔵される宗教史や移民関連の史料を調査・分析することも視野に入れている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度から始まったコロナ禍が21年度も継続したため、当初予定していた連合王国や合衆国での海外資料調査を実施することができなかった。のみならず、国内での資料調査に関しても、首都圏や関西圏への移動が制約され、各地の大学図書館や研究施設の利用が十分にできなかった。そのため予定していた海外旅費と国内旅費を使うことが困難になった。 これに対して、2022年度はコロナ禍がある程度まで収束することが見込まれるので、海外での史資料調査と国内での史資料調査を目的とし、海外旅費と国内旅費を使用する予定である。また、収集した史資料を分析・解明するために、書籍などを購入する物品費、史資料を整理するための人件費や謝金も必要となる。以上から、2022年度は、本研究を遂行するための旅費、物品費、人件費の使用を計画している。
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