研究課題/領域番号 |
21K00921
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
和田 光弘 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (10220964)
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研究分担者 |
森脇 由美子 三重大学, 人文学部, 教授 (10314105)
久田 由佳子 愛知県立大学, 外国語学部, 教授 (40300131)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 大西洋史 / アトランティック・ヒストリー / ジョン・チョート / エリー運河 / ゼブロン・ダグラス / ピーボディエセックス博物館 |
研究実績の概要 |
本研究では東海地区における共同研究という機動力を最大限に生かしつつ、地域・時代ともに幅広い個別事例を収集・分析し、そこから得られたさまざまな知見を総動員して大西洋史の視座の有効性を示してゆくことを目標とする。研究代表者・研究分担者は、それぞれの担当する研究課題を出発点として本研究のテーマにアプローチした。もっとも本年度は、引き続いてのコロナ禍により、海外での史料収集や実地調査が不可能となり、やむをえず当初の予定を若干変更せざるをえなくなったが、そのような状況下でも、インターネットの活用や、すでに手元にある史料の解析を鋭意進めるなどして、研究の進捗に影響のないように取り計らった。研究代表者の和田光弘は、「シス大西洋史」の一端を明かにすべく、18世紀末マサチューセッツ州の地方名士J・チョートの遺産競売に関する史料の分析を引き続き試みた。また、上智大学アメリカ・カナダ研究所主催の合評会において、著者として報告をおこなうとともに、日本アメリカ史学会・第18回年次大会では、シンポジウムのコメンテーターを務めた。さらに、ちくま学芸文庫から拙訳の文庫版を上梓した。研究分担者の森脇由美子は、引き続き、ニューヨーク州マディソン郡サリヴァンの有力者ゼブロン・ダグラスの邸宅に残された未刊行史料「オネイダ湖運河文書」の分析をおこなうとともに、同運河およびダグラスについて、ニューヨーク州議会などの公文書などから探った。研究分担者の久田由佳子は、捕鯨業に従事する男性とその妻たちの手紙などを通じて、陸に残された女性たちの生活を明らかにしながら、大西洋史に女性史の視点を積極的に取り入れつつ、マサチューセッツの捕鯨基地の経済的変容、大西洋経済における位置づけなどについて考究した。また、日本アメリカ史学会第51回例会のコメンテーターとして、北東部の女性史・労働史研究者の立場から、コメントをおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者と分担者はそれぞれ担当するテーマのもと、独自に米国の市井より入手して私蔵している未刊行手稿史料のオリジナル等を中心とする新史料の読み込みと分析をおこない、大西洋史の実証的な深化を試みた。研究代表者の和田は、18世紀末にマサチューセッツ州イプスウィッチで死去した地方名士J・チョートの遺産競売に関する史料(和田私蔵)の分析を引き続き試みた。これにより、「シス大西洋史」の具体相の一端を明らかにできると思われる。また前述のように、上智大学アメリカ・カナダ研究所主催の合評会(「岩波新書〈シリーズ アメリカ合衆国史〉合評会・第1回」)において、著者として報告をおこなうとともに、日本アメリカ史学会・第18回年次大会では、シンポジウム「白人至上主義をめぐる歴史と歴史認識」のコメンテーターを務めた。さらに、ちくま学芸文庫から拙訳の文庫版を上梓した(S・ミンツ著、川北稔・和田光弘訳『甘さと権力』)。研究分担者の森脇は、ニューヨーク州サリヴァンの個人宅から発見された未刊行史料のオリジナル(森脇所蔵)を分析の俎上に載せて、同史料の読み込みを進めた。これらの史料は、エリー運河の支線オネイダ湖運河に関する 82 点からなり、サリヴァンの有力者ゼブロン・ダグラスが州議会における証言のためにまとめ、保管していたと考えられ、大西洋の彼方の市場へのアクセスがいかにして可能となったのか、「シス大西洋史」の実践例となろう。研究分担者の久田は、大西洋史に女性史の視点を取り入れるべく、ピーボディエセックス博物館の史料(乗組員の手紙、結婚証明書、保険証券等)の読み込みを通じて、マサチューセッツの捕鯨基地の大西洋経済における位置づけなどについて考究を進めた。また前述のように、日本アメリカ史学会第51回例会「アンテベラム南部史研究の新解釈」のコメンテーターとして、女性史・労働史研究者の立場からコメントをした。
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今後の研究の推進方策 |
主要設備としては、関連史資料の収集を引き続き進めるとともに、すでに研究代表者の和田が名古屋大学に導入している「初期アメリカ刊行物史料集成:エヴァンス・データベース(America’s Historical Imprints, Series I: Evans, 1639-1800)」を一層活用したい。このデータベースは、17・18世紀にアメリカで出版されたほぼ全ての刊行物を網羅し、大西洋史研究の重要な基礎資料となりうるもので、NII-JUSTICE共同購入コンソーシアムに採択されていることも助けとなって、名古屋大学での導入を成功させたが、研究協力者の所属する愛知県立大学、三重大学にとっても貴重な史料集成といえる。上記の共同作業を通じて、東海地区の主要国公立大学3校のアメリカ史研究者間のネットワークが強固となり、関連文献等も重複なく充実させることが可能となろう。さらに和田は、大西洋史の諸相や史料の利用に関する諸問題を総合的に考察するとともに、個別の適用例として、マサチューセッツ州イプスウィッチの地方名士ジョン・チョートのオリジナル文書(和田所蔵)の分析に引き続き邁進し、大西洋史の下位分類たる「シス大西洋史」の具体相を明らかにする。研究分担者の森脇は、ニューヨーク州マディソン郡サリヴァンの個人宅から発見された未刊行史料のオリジナル(森脇所蔵)の分析を引き続きおこなう。研究分担者の久田は、ピーボディエセックス博物館の諸史料の調査や、捕鯨業に従事する男性とその妻たちの手紙の分析などを引き続きおこない、陸に残された女性たちの生活を明らかにし、マサチューセッツの捕鯨基地の経済的変容、大西洋経済における位置づけなどについて鋭意考究する。研究代表者・分担者ともに、上記の研究の成果を論文にまとめて、広く学界に問う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
各自、主要設備として関連史資料の収集を鋭意おこなったが、その金額が予定より大幅に少額であったことや、米国での史資料収集の予定が、新型コロナの影響で実施できなくなったことなどから、未使用額が生じた。来年度は、関連史資料の収集はもとより、海外での研究調査なども、積極的に実施する予定である。
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