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2023 年度 実施状況報告書

イタリア中世都市の市民概念に関する動態的研究――周縁者から見る

研究課題

研究課題/領域番号 21K00923
研究機関大阪大学

研究代表者

中谷 惣  大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 准教授 (10623390)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2026-03-31
キーワード高利貸し / 周縁者 / 市民
研究実績の概要

本研究は、共同体メンバーの縁で市民と非市民とを行き来する周縁者の社会経済活動、諸権利の享受の実態を解明することで、中世都市の市民のあり様を把握しようとするものである。本年度は、周縁者の中でも高利貸しに焦点を絞り、ルッカ、フィエーゾレ、プラート、ピストイア、アレッツォの国立文書館および司教座附属文書館で史料調査を行った。特に裁判記録を基に、教会裁判所が把握し裁いた高利貸しについてデータを収集、分析した。その結果、高利貸しとして告発された者には、世俗権力から認可され質屋を営む外来の貸金業者だけでなく、隣人や知人同士で金銭を融通し合う地元のアマチュアの金貸しがいたことが明らかになった。後者は公証人文書や覚書を基に信用貸しを行う地域でのクレジットの提供元であり、世俗法廷を用いて債権を回収する債権者でもあったが、金銭貸借で当然つきまとう利子の取得行為を教会法に反する高利貸しの罪として告発され断罪されることで、財産を没収されキリスト教徒の共同体から排除されることもあった。とはいえ高利貸し自身またはその相続人による利子の返還を通じて、社会に再統合される道も残されていたことが、教会裁判所の記録から明らかになっている。
なお、この研究成果については、7月にイギリス・リーズで開催された国際中世学会での共同セッション、および9月のオーストラリア・モナッシュ大学主催の中世・ルネサンス研究セミナーにおいて報告した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度前半にはイタリアに滞在し、ルッカ、フィエーゾレ、プラート、アレッツォの各司教座附属文書館で史料調査を行うことができた。

今後の研究の推進方策

次年度も引き続き、トスカーナの司教座附属文書館での史料調査を実施する。場合によっては隣接するウンブリア地方の文書館に赴き高利貸しや追放者に関するデータを収集する。

次年度使用額が生じた理由

本課題の発展を目的とした国際共同研究加速基金を用いて海外出張を行ったため当初予定していた旅費を支出する必要がなくなったため。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2023

すべて 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [学会発表] Credit Risks: Insolvency and Usury in Late Medieval Italy2023

    • 著者名/発表者名
      So NAKAYA
    • 学会等名
      International Medieval Congress
    • 国際学会
  • [学会発表] Credit and Usury in Late Medieval Tuscany2023

    • 著者名/発表者名
      So NAKAYA
    • 学会等名
      MONASH MEDIEVAL AND RENAISSANCE STUDIES SEMINAR
    • 国際学会 / 招待講演
  • [図書] 伝統社会の司法利用ーー東西比較の可能性2023

    • 著者名/発表者名
      松本尚子編
    • 総ページ数
      349
    • 出版者
      大阪大学出版会

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公開日: 2024-12-25  

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