研究実績の概要 |
広島・長崎の被爆者、米核実験によって被ばくしたマーシャル諸島の人たち、また旧ソ連による核実験の被災者たち、さらにはそのほかの核実験実施国による多くの被災者は、核軍備拡張の競争の中で、国家安全保障上の理由によって隠されてきた。本研究の目的は、米ソ冷戦を、隠されてきた核被災者の視点から分析しなおすことである。 2021年度はオンラインでの企画や日本国内での調査が中心であったが、この目的をかなり達成できた。研究代表者の高橋博子は2022年3月には Bensaude-Vincent, Bernadette Boudia, Soraya, Sato, Kyoko, eds., Living in a Nuclear World: From Fukushima to Hiroshima [核の世界に生きる:フクシマからヒロシマへ]に“10. Continuing Nuclear Tests and Ending Fish Inspections: Politics, Science, and the Lucky Dragon Incident in 1954,” と題して論文を寄稿した。またNHKスペシャル『原爆初動調査:隠された初期被曝』(8月9日放送)に協力し、研究成果をより社会に還元することができた。 研究分担者の桐谷多恵子は日本平和学会グローバルヒバクシャ分科会共同責任者として春季研究大会にて「アメリカと核被害―ジェンダーと先住民族の視点を踏まえて」をテーマとした企画を実施した。 研究分担者の竹峰誠一郎は日本平和学会秋季集会グローバルヒバクシャ分科会にて「世界の被ばく者援護制度:カザフスタンとフランスの事例から」をテーマにした企画で司会を務め、世界の核被災者援護とその中での核兵器禁止条約の意義と可能性について示唆した。
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