研究課題/領域番号 |
21K00934
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
長谷川 貴彦 北海道大学, 文学研究院, 教授 (70291226)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | インナーシティ / 福祉国家 / コミュニティ / エゴドキュメント / 社会運動 |
研究実績の概要 |
本研究は、「民衆的個人主義」をキー概念に、インナーシティ問題を背景として登場してくるコミュニティ・アクション(地域社会事業)を対 象として1970年代イギリスの福祉国家の再編過程における社会意識(主観性)の変容を、オーラルヒストリーやエゴ・ドキュメント研究の成果 による史料としての民衆的アーカイ ヴを駆使しながら、明らかにしようとするものである。戦後史の研究は、同時代の資料公開が進むなか で本格的な歴史研究が試みられるようになっている。そこでは、社会や文化の変容と絡めて戦後史を叙述する傾向が強く、本研究においては「 民衆的個人主義」をキー概念に検討をおこなう。それは、戦後福祉国家のなかで自己決定権を高めてきた民衆レベルでの個人主義であり、この 意識がコミュニティ・アクションとして発現したと考える。コミュニティ・アクションは戦後福祉国家史の転換点となるとともに、1970年代の 転形期のアモルファスな社会意識を集約したものであり、それをオーラルヒストリーやエゴ・ドキュメントなどの民衆的アーカイヴを活用する ことにより明らかにするものである。本研究では、コミュニティ・アクションによる住宅問題への取り組みとして、ケンジントン地区のノッティングヒル地域のジャン・オマリーなどが指導する活動、すなわち公営住宅をめぐる賃貸人の運動 (tenants’ movement)やホームレス対策のなかでの「家屋占拠運動」(squatting)について取り上げる。本年度の成果としては、長谷川貴彦「貧困と福祉の歴史学 イングランドの歴史的経験から」「ジェンダー史学」18号を執筆、学会報告としては日本西洋史学会第72回大会(東洋大学)小シンポジウム 「サッチャリズムの歴史的前提:民衆的アーカイヴによる1970年代の再検討」2022年5月22日 において、「趣旨説明」をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、コミュニティ・アクシ ョンが活発であったロンドンのケンジントン地区ノッティングヒル地域の事例を取り上げたいと考えている。2023年3月には資料調査をおこない、英国図書館所蔵のコミュニティ・アクション関連の文献を閲覧し、またケンジントン地区図書館地方史部所蔵のノッティングヒル地域のコミュニティアクションに関連した文献の閲覧をおこない、具体的な資料の残存状況などについての概観を把握することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度もミュニティ・アクシ ョンが活発であったロンドンのケンジントン地区ノッティングヒル地域の事例を調査したいと考えている。2023年8月には資料調査として英国図書館所蔵のコミュニティ・アクション関連の文献を閲覧し、またケンジントン地区図書館地方史部所蔵のノッティングヒル地域のコミュニティアクションに関連した文献の閲覧をおこない、分析をおこなうことにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に支出する予定だった海外渡航費が、コロナのために使用できなかったことによる。2023年8月に英国にて資料調査をおこなうために海外渡航する際に残金を使用する予定である。
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