研究課題/領域番号 |
21K00938
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
舘 美貴子 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (60376580)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | アメリカ現代史 / 音楽 / 福音派 / 社会運動 |
研究実績の概要 |
本研究「カウンターカルチャー後のアメリカにおける福音派の音楽と政治に関する歴史的研究」は、1970年代以降のアメリカにおいて、福音派キリスト教徒が宗教右翼として政治的な存在感を高めていくなかで、音楽がどのような役割を果たしたのか、そして、カウンターカルチャーを担っていたヒッピーが集団で福音派キリスト教に改宗したジーザズ・ムーブメントを契機として発展したコンテンポラリー・クリスチャン・ミュージックが宗教右翼の台頭と勢力維持にどのような貢献をしたのかを明らかにすることを目的としている。初年度にあたる当該年度は、戦後のアメリカにおける保守運動の展開およびジーザズ・ムーブメントの音楽からコンテンポラリー・クリスチャン・ミュージックへの発展に関する文献の講読を進め、関連した先行研究を整理するとともに、刊行された資料や音楽家の演奏に関する記録などを収集、分析した。また、福音派の音楽祭に関する文献調査も行い、政治との関連、特に福音派の社会運動における人種の問題について、音楽批評との関連のなかで検証を進め、ジーザズ・ミュージックが人種に関する認識についてもたらした意義を考察するとともに、従前の研究ではコンテンポラリー・クリスチャン・ミュージックの前史においてロックに比して軽視される傾向のあったフォークソングの意義について、その文化的意味の継承を示すことによって新たな知見を提供した。これについては論文にまとめ、国際学会のプロシーディングスに掲載された。今後は、アーカイブ調査をとおして、さらに福音派の音楽祭についての資料を収集するとともに、宗教右翼団体の刊行物などの分析も進めてゆく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
渡米はできなかったものの、出版された資料の収集や分析、先行研究の調査などは進めることができ、論文も出版することができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、1970年代以降の福音派の社会運動のなかで、音楽がどのように利用され議論されたか、そして、コンテポラリー・クリスチャン・ミュージックの担い手、受容者、作品がどのような政治的メッセージを発信・共有したのかを明らかにするために、次のような手順で研究を進める予定である。まずは、これまでに引き続き、1970年代から1980年代のアメリカにおける主要な宗教右翼団体の結成とメディアを通した活動を雑誌やダイレクトメールなどの歴史資料や、これらの団体を結成したテレビ伝道師の番組や著書などをもとに検証する。特にアーカイブ調査を通して、福音派の音楽祭についての資料収集と分析をさらに進める。そして、コンテポラリー・クリスチャン・ミュージックに関する刊行物や作品、音楽家や批評家の手記やインタビューを収集し分析を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により渡航を見合わせたため。また、資料などについてはオンラインで入手可能なものについては無料で入手したり、文献についても古本などなるべく廉価で購入するようにしたため。
|